名古屋大学  客員教授

                                   経済学博士 

 期待しにくい景気引上げ策の効果

  ―――政府は懸命であるものの―――2016111

 道半ばと自覚する安倍政権は目標に向かって懸命に景気を引き上げようとしている。

その方策として、当初効果を発揮したといわれる金融政策には限界があることが分かってきた。日本銀行による膨大な国債などの買い入れとマイナス金利政策である。それによって円安となり、輸出産業を中心に潤った。しかし、その効果は長続きせず、今後も大きな期待を抱くわけにはいかない。

今回は財政政策に重点が移ってきた。その中身は補正予算と財政投融資を中心とした景気振興策である。財源難の政府としては、できる限り財政投融資を活用したいところである。

リニアー新幹線の名古屋から大阪への延長を前倒しにするほか東京オリンピックのための投資など政府が推進する大型の投資が景気を活性化することは間違いない。

ただし民間で資金が有り余っているところから、企業が必要とする資金は簡単に調達できる。したがって政府による投融資が投資を活発にする力は小さいと考えられる。

役に立つのは実際に資金を投入する補正予算である。分かっていても財政赤字が膨大なため、赤字の上乗せについては限界がある。むしろ財政再建のために赤字を圧縮しなければならない状況に置かれている。

しかも補正予算は毎年組まれている。例年分につては経済界でも先刻予想しているであろう。それに上乗せする分だけ新たな施策として景気刺激効果を勘案することができると考えられる。

結果として大きな力にはならないと思われる。日本経済全体を押し上げるためには政府による政策の力では限界があるわけである。

もちろん海外経済が及ぼす影響は大きい。しかしアメリカの景気に力強さはなく、イギリスの離脱を控えてヨーロッパ経済も混乱が続くと思われる。中国の経済成長率が上昇する気配が窺えず、その他の中心国、発展途上国も世界経済全体を引っ張る力はない。

政府をはじめ他力による景気上昇を期待することは難しい。

---セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLand への寄稿(2016.11.1)から---

 

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