名古屋大学  客員教授

                            経済学博士  

2016.10.1

    経済成長の夢は追えない

      ―――長期的な準備が必要―――

 全体の経済が拡大すれば、良いことが続出する。

 企業は売り上げが増加し、それに伴って収益が激増する。その恩恵は従業員へ及び、ボーナスが増え、賃金が上がる。雇用も増加する。人々の懐が豊かになり、消費が増える。それが企業の売り上げ増加につながり、好ましい循環が生じる。

 さらなる売り上げの増加に対応するため企業は投資を増やすであろう。それが景気をさらに押し上げる。

 企業の収益増で法人税が急増する。人々の収入が増え、所得税も消費税も増える。国家の税収は大きく増加する。

 景気を押し上げることに政府も懸命である。そのために政策を総動員している。それは今日だけではなく、従来も同様であった。その結果が今日の経済状況である。

 歴代政府がこれだけ懸命に押し上げようとしているにもかかわらず、経済は四半世紀も成長から見放されている。我が国の国内総生産は大勢として右肩下がりの傾向にあり、経済水準は下がり気味となっているのである。

 そのうえ今後も少子高齢化が進むため、経済環境は年々悪くなる。

 海外の経済が拡大すれば輸出が伸びて我が国も助かる。しかしアメリカに期待を抱くことは難しい。イギリスの離脱を控えるヨーロッパは移民問題が深刻で、経済どころではない。中国の成長率が復活する見込みは少ない。多くの中進国も発展途上国も先進国の影響を受けており、独自の発展で全世界の経済を引き上げる力はない。

 我が国の政府ができることには限界がある。特に国家財政が破綻しているため、政府として有効であることが分かっていながら、財政政策を発動し、大幅に財政赤字を上乗せすることは不可能である。

 これらの状況を我々は理解しているはずである。それだけに政府が経済の成長を目指して意欲的な将来を披歴しても、それに頼って効果を待つわけにはいかない。

 政治的な発言に頼るのではなく、将来を各自が見極めて準備する以外にない。

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2016.10.1)から---

 

 

inserted by FC2 system