名古屋大学 客員教授
経済学博士 水 谷 研 治
非常事態への対応力
―――体力・体質が勝負―――2016年9月1日
天変地異、将来何が起きるか分からない。それだけに準備が必要である。それぞれが最低限の用意をしているはずである。
ところが想定を超えた大災害が起きた場合、諦めるわけにはいかない。復旧を目指し、再起を図らなければならない。
そこで必要なのは、非常時に発揮することができるだけの体力を備えていることである。
個人であれば、大事故あるいは大病がある。それに備えるため日ごろから強靭な体質を作り上げておかなければならない。急に働けなくなり大金が必要になる。そのためには相当な蓄積が要請される。
企業の場合にも多くの重大事が予想される。緊急時の対応に人員の動員や配置の演習が行われている。事態が長引けば、操業の停止が続き、倒産の危機に瀕する。そこでは内部留保がものを言う。
留保は利益の内、賃金や配当などとして社外へ支払った残りである。それを投資として体質の強化に向けることも重要である。そして残りをいわゆる内部留保とすることになる。それらの重要性については誰もが分かっているはずである。
同様のことは国家にも当てはまる。国の一大事は対外的なものが最大であるが、国内でも地震、風水害などの大天災がある。予想を超える大恐慌もある。
それに備えるための国防はもちろんのこと、治山治水、社会資本の整備、緊急対応策などやるべきことは多い。そして緊急事態が発生すれば、総力を挙げて対応しなければならない。
人的にも制度としても準備が必要である。そして復興のために大量の資金を投入しなければならない。
ところが我が国にはその力がない。財政が破綻していて、必要な社会資本の整備も十分とは言えない。国の借金は莫大であり、その返済のために国民が将来にわたり負担を迫られる金額は膨大な額になる。国が積極的に資金を投入できる状況とは程遠い。
この状況を国民も企業も弁えておく必要がある。最終的に国家は当てにならない。もっぱら民間が自分で対応をしなければならない。
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への寄稿(2016.9.1)から---