名古屋大学  客員教授

                                   経済学博士 

 優位性の保持と向上

  ―――向上心の低下が心配―――201671

 高度成長を続け、あらゆる面で世界一を目指した日本経済に昔日の面影がない。

 いろいろと特殊要因を挙げたり、理屈をつけて一時的なものと自分自身を納得させることはできる。しかし現実を直視すると、我が国の優位性が落ちてきたことを認めざるを得ない。

 正確無比を誇った日本の社会で事故が起きるようになった。それが徐々に増えていきそうである。信頼性が揺らぐと効率性が損なわれ社会的な費用が増加する。それがどの産業にとっても打撃となる。

 企業にとっても同じ状況である。世界中を席巻した日本の製品が外国産に押されるようになった。海外で生産された多くの電気製品が輸入されている。

 より良い製品を目指して邁進してきた企業の意欲が衰えてきているように思われる。全体として経済が成長しなくなると、新しい物を作っても売れ行きが期待しにくい。他の分野の売り上げも伸びないため、企業全体として余裕がなくなる。社員の教育に時間と費用を掛けることが難しくなってきた。

 経験豊富な熟練者が退職するようになってきた。彼らの豊富な経験でやりくりしていた部分を技術の向上で置き換えなければならない。それには若手を育成する必要がある。

 ところが少子高齢化で豊かな社会で生まれ育った人々に意欲を持たせることは簡単ではない。厳しく指導しようとすれば、やめてしまう。これでは現状維持が精一杯となる。

 現在の水準に留まろうとすると、水準が落ちていく。絶えず向上を目指さないと水準を維持することは難しいからである。

 この現象が現実に起きているように思われる。それは社会全体としても、企業でも個人でも同様である。

 基本は向上心が重要であることの認識である。現状に甘んじることなく、あらゆる分野について、課題を見つけ、解決方法を探し出し、実行していくことが必要である。それを実践した個人、企業、社会が再び繁栄を手にすることができると考えられる。

---セイコーエプソン税務会計情報TabisLand への寄稿(2016.7.1)から---

 

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