企業の競争力を復活させる必要性
―――向上心が低下すると衰退へ―――
2016.7.1 名古屋大学 客員教授
経済学博士 水 谷 研 治
日本経済の力強さが落ちてきたように思われる。かつては世界中を席巻した電気製品の多くを国内で生産しなくなった。かつては輸出していた製品を輸入するのが常態となっている。
海外に太刀打ちできなくなった製品が増えてきた。現在はまだ優位性を発揮している製品も将来は席を海外に譲ることになる恐れがある。それが先進工業国の流れである。
その背景にあるのは社会全体として新しいことに対する挑戦の意欲が乏しくなってきたことがあるように思われる。豊かな社会に生まれ育った人たちが求めるのは自分の好みに合わせた生き方であり、与えられた持ち場で課題を発見し解決に努力することではないのであろう。
従来と同じことを繰り返すだけで十分との考え方が浸透していると、その場で新しいことに挑戦しようとする気が起きない。向上しようとしなければ、水準が保てなくなる。水準は落ちていく。
しばらくしなければ水準が低下していることに気が付かない。気が付いた時にはもはや復活が難しい。競合する世界から劣後するからである。
このような日本の社会の中で企業も同じことが言えるであろう。少子高齢化が進み、若人が人手不足から教育がしにくくなる。厳しく言えば、やめてしまう。
どの職場にも熟練者が居て、問題が発生した時には長年の経験を生かして解決にあたってきた。おかげで問題が深刻になることなく解決したことが少なくなかったと思われる。
それらの熟練者が退職する前に経験に依存しなくてすむように、技術の水準を引き上げておかなければならない。
ところが、それだけの余裕が人的にも資金的にも乏しいと考える企業が多いと思われる。
もしそうなら衰退の道をたどる以外にない。社会全体の傾向が安易に向っているだけに、それに対抗し向上心を掻き立てることは容易なことではない。しかし極めて重要なことである。
---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2016.7.1)から---