名古屋大学  客員教授

                            経済学博士  

2016.6.1

    投資意欲の盛り上げは難しい

     ―――マイナス金利による景気引上げ効果は乏しい―――

 マイナス金利の下で資金が極めて安く借りられる。大いに利用して盛大に投資を実行してもらいたいと日本銀行をはじめ政府当局者は考えている。

 投資によって物が買われれば、それだけ需要が増えて景気を押し上げる。と同時に将来の発展につながる。我が国にとって、これほど好ましいことはない。

 企業の経営者としても将来の発展のためには、新しい分野を開拓したいと考えているはずである。過去における積極的な投資の結果として今日の繁栄を勝ち取っている多くの企業がある。現状を維持するだけでは、いずれ発展から取り残され、生き残ることさえできなくなるとの恐怖心もある。

 しかし逆の企業も少なくない。投資が失敗し、場合によって企業の存亡につながった例もある。

 将来にわたる責任を考えると難しい判断である。積極的であるべきか消極的であるべきかは時代によっても、経済情勢によっても、経営者によっても違ってくる。

 いわゆる高度経済成長期には積極論がもてはやされた。それが、また経済成長を高めていった。景気の良い時期には、積極論者が勝つ場合が多い。そのような時代には積極的な経営者が羽振りを利かせた。たとえ失敗しても取り戻すことができた。

 一方、昨今のように停滞した時代には正反対になる。投資の失敗で巨額の損失を計上する巨大企業がある。かつては繁栄を極めた企業が立ち行かなくなっている。

投資の失敗は取り返しができないため許されない。安全性を考えると、保守的な考えが強くなる。これでは投資が活発になるはずがない。

これほど資金が余っているにも関わらす、多くの企業はそれを利用しようとしていない。そこへさらに多くの資金を提供してみても、さらに金利を引き下げてみても効果は上がらないであろう。それによる景気の上昇は期待できないと思われる。

---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2016.6.1)から---

                 

 

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