名古屋大学  客員教授

                                   経済学博士 

マイナス金利のマイナス効果

    ―――混迷を深める金融界―――201641

 日本銀行がマイナス金利にしたのは、金融機関の日銀預け金の一部である。しかし、その効果は絶大である。短期と中期の国債だけではなく、10年物の国債の金利さえもマイナスになった。

 その狙いは、金融機関が民間の企業や個人に資金を供給することにより、投資や消費を活発にして景気を引き上げることであったはずである。円資金が豊富になれば円相場も値下がりするであろう。それが輸出産業にも良い影響を及ぼす。

資金が豊富になれば、株式へも資金が回るであろう。全体の景気が良くなれば、それも株価を押し上げる。それが、また全体の景気観を明るくして景気の上昇に結びつく。

 これらの良い効果が出ていない。理由は資金が大量に余っているからである。そこへ資金がさらに投入されても、さらに資金が余るだけである。そして逆にマイナスの効果が目立ってきた。

 預金金利をマイナスにできない金融機関は損失を覚悟でマイナスの国債を買うことが難しい。資金を運用できない金融機関は経営が成り立たない。その典型が「ゆうちょ銀行」である。

 多くの金融機関は従来、単価の安い国債を保有しており、その含み益が経営を支えている。しかし、国債は大きく値を上げており、将来値下がりが予想されるだけに、そのような新たな国債を購入することは難しいのではなかろうか。

 このことは大量の国債を発行し続けなければ資金不足になる国家財政にとって重大な事態になることを意味している。それを回避するためには日本銀行による引き受けが考えられる。その禁断の木の実を貪る以外にないのではなかろうか。

 マイナス金利を続けることは極めて難しいと思われる。さりとて金利を元へ戻し、引き上げていくことも容易なことではない。追い込まれているのは政策当局である。

 これまで長年にわたり実行してきた経済・金融政策を根本から見直さなければならない事態に直面している。その結果、大きく押し上げられてきた経済がどうなるか考えるべきところである。

---セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLandへの寄稿(2016.4.1)から---

 

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