名古屋大学
客員教授
経済学博士 水 谷 研 治
2016.4.1
マイナス金利の持続性
―――国債が発行できなくなる?―――
日本銀行は景気を引き上げるために金利をマイナスにした。
金融機関が日銀へ預けている資金の一部をマイナスにしたのは、それによって資金が日銀から民間へ流れることを狙ったものである。金融機関が民間へ資金を供給すれば、それが投資や消費に使われ、需要を拡大して景気が良くなるとの考え方である。
現実にはそのようになっていない。すでに民間では資金が有り余っていて、そこへさらに資金が提供されても金余りが上乗せになるだけである。
余った資金が運用先を求めて右往左往している。膨大な資金が金融機関を通じて国債市場に流れていた。そこへさらに余剰資金が加わると、国債は値上がりする。そして短期の国債だけではなく、長期の国債すらマイナス金利になってしまった。
預金などの仕入れ資金をマイナスにし難い金融機関としては、損失を覚悟でマイナスの国債を買うことは難しい。
国債の買い手は為替相場を利用した利ザヤ稼ぎの人々と日本銀行が中心になっていると考えられる。極めて歪な姿である。このような形で大量の国債を発行していくことができるであろうか。
この現象を加速するのがマイナス金利の増幅である。それが不可能とは言わないが、その弊害を考えれば、実行は難しいのではなかろうか。
すなわち金利の見通しとしては、マイナス幅が大きくなるような措置を実行することは難しく、逆に金利を引き上げざるを得ないと思われる。
金利が上がると国債などの債券価格が低下する。金利の上昇が予想されれば、国債市場は激変する。
将来的に値下がりが予想される国債を購入することは難しいであろう。それは大量に国債を購入している銀行をはじめ各種の金融機関に共通するはずである。
大量の不足する資金を国債の発行で賄っている国家財政にとって、国債が発行できなくなると大変な事態になる。
---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2016.4.1)から---