名古屋大学
客員教授
経済学博士 水 谷 研 治 2016.3.1
原油暴落のプラスとマイナス
―――資源価格低下の効果は大きいが―――
原油をはじめ多くの資源の価格が大きく値を下げている。これら原燃料の大部分を海外から輸入している我が国は恩恵に浴している。
各種輸入原燃料が値下がりするおかげで、国内の多くの分野で支払い費用が節減できる。輸入額が減るため貿易赤字が減少し、我が国の経常収支の黒字が増加する。
そのため為替相場の基調が円高へ向かった。本来なら円相場が大きく上昇するはずである。その結果として輸出が減少し輸入が増加して国際収支の黒字が減ると考えられる。
しかし、現実にはそれほど円相場が上昇しているわけではない。お蔭で輸出産業が円高で打撃を受けることが少なく済んでいる。
ところが資源安の背景となっている世界的な景気の低迷が輸出の伸びを押さえている。
長年にわたり世界中から大量の資源を買い続けた中国が様変わりになった。中国経済の成長率低下は当分の間、続くと思われる。アメリカの景気は上昇しているとは言っても、伸び率は低い。上昇率が上がれば、中央銀行が金利を上げるため、景気の頭を押さえることになるであろう。移民問題に揺れるヨーロッパは景気どころではない。資源国は軒並み大きな打撃を受け、破綻が心配されている。
結果として我が国の輸出環境は悪化しており、今後も好転が見込めそうもない。輸入が減少するために国際収支はよくなるものの、縮小均衡的に動くことが予想される。
輸出産業は主要産業であり、しかも関連部門が多い。それらの各企業が伸びないと全体としての景気に好ましいはずがない。上昇への弾みがつかない。
これが世界的な傾向になると思われる。それを打開するには、経済力の大きい国が犠牲的に大量の浪費をすることが必要である。
しかし、すでにその方策はアメリカや日本さらには中国で使い尽くされており、その反省期にきている。この現実が基調であることを前提として対応を考える必要がある。
---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2016.3.1)から---