名古屋大学  客員教授

                                   経済学博士 

 株価が支えた景気

   ―――景気へ及ぼす株価の大きな影響―――201621

 株価は将来の景気を反映すると考えられている。そのために景気の行方に注目する人が少なくない。

 景気の先行きに対しては多くの要因があり一筋縄ではいかない。その中で将来の景気を先取りして表わすのが株価と思われている。そこで株価が上昇すると、やがては景気が上昇すると考えられる。

 景気上昇の好機を捕まえなければならない。仕入れを増やす必要がある。生産を増加し、新しい需要に対応するためにも、この折に設備投資を積極的に行おうとする。

それらの動きに後れを取ることは、せっかくの好機を逃すことにつながる。多くの企業が購入をすると物がなくなる可能性がある。値上がりして高い物を買わされることも考えられる。設備投資でも出遅れれば、条件が悪くなる。機械の納入が遅れる可能性がある。決断と実行を急がなければならない。

その結果として需要が高まる。景気が上昇する。それが株価へ反映して上昇する。それが人々の気持ちをさらに高揚させる。

現実の株価は株式の需要と供給の結果として決まってくる。影響を及ぼす要因の一つに金融情勢がある。資金が大幅に余ると、その運用のために株式を買うことが考えられ、株価上昇につながる。逆に資金が不足すると、株式を売却する力が働き、株価が下落する。

日銀が極端な資金供給を行った結果として大幅に株価が上昇し円相場が下落したと考えられる。それが先行きの景気観を明るくし、現実の景気上昇につながった。

従来、株価を押し上げていた金融要因に息切れがうかがわれる。異常な資金供給をいつまでも続けることはできない。正常化を図ると、金融要因が逆に作用する。すでにアメリカの中央銀行は金利の引き上げを始めた。世界中の中央銀行が正常化の途を模索していると思われる。

世界の経済は低迷を続けそうである。それらが株価へ反映すると従来とは変わってくる可能性がある。それが先行きの景気に影響することを考慮する必要があると思われる。

---セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLandへの寄稿(2016.2.1)から---

 

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