名古屋大学
客員教授
経済学博士 水 谷 研 治
2016.2.1
景気観への影響が大きい株価
―――株価が支えた景気―――
株価はそれぞれの株に対する需要と供給によって決まってくる。その場合、多くの要因が作用するが、中でも重視されるのが景気である。将来に対する見通しを反映する株価は将来の景気によって大きな影響を受けるからである。すなわち株価は景気を先取りして動くと考えられる。
そこで株価が上昇すれば、やがては景気が良くなると多くの人々が思うであろう。その準備が必要である。企業が積極的な行動に移ると原材料をはじめとして多種多様の購入が増える。生産を拡大するための投資も活発になるであろう。結果として景気が上昇する。
株価が下落する場合は正反対の動きが予想される。多くの人が将来に対して警戒感を抱くであろう。人々の行動が控え目になり、購入が減り、将来計画が見直され、場合によっては計画を取り止める可能性が出てくる。それらが需要の縮小を招き、景気が悪化する。
その株価は先行きの景気を反映するが、それ以外にも影響を受ける。その代表が金融情勢である。資金が豊富になると、それらの運用のために株式市場へ資金が流れ込んで株価を引き上げる。逆に資金が不足すると株式市場から資金が引き上げられることが考えられる。その結果、株価が下がる。
第2次安倍政権の発足以来、東京市場の株価は大きく上昇した。そこには金融の極端な緩和が大きな要因になったと考えられる。直接、株式市場に資金が流入しただけではなく、大幅な円安で主要な輸出企業にとって追い風になったことが大きかった。
極端な資金の大量供給による株価の押し上げ要因は限界にきているであろう。アメリカの中央銀行が金利を引き上げ始めた。異常な金融情勢を正常化させなければならないと各国の中央銀行は思っているはずである。この面からの株価への悪影響は長期的と考えなければならない。
これまでの株価によって押し上げられ、維持されてきた景気がいつまでも、その要因だけで維持されると考えていることは難しくなってくるのではなかろうか。
---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2016.2.1)から---