2016年経済への期待
―――政策には限界―――2016年1月1日
名古屋大学 客員教授 経済学博士 水 谷 研 治
テロの脅威が世界の経済に影を落としている。頼りにしたいアメリカの景気に勢いがつかない。さらに景気が上昇すると、アメリカの中央銀行が金利を引き上げるであろう。金融政策を正常化しなければならないため、それが景気の頭を押さえると思われる。
低迷を続けるヨーロッパも同様の問題を抱えている。世界を引き上げてきた中国経済の伸びが落ちてきた。資源国が落ち込んでいる。世界経済は低迷を続けるであろう。輸出の環境は芳しくない。
国内の需要を振興するため、経済政策に期待したいところである。ところが我が国の政府には余力がない。
これ以上の金融政策が効果を上げられるとは思えない。有力と考えられる財政政策を活用しようとしても財源がない。むしろ財政再建のために支出の徹底した削減と大増税が必要である。それが景気を大幅に悪化させる。
幸いにして安倍内閣が本格的に財政改革を実施する意図はなさそうである。
政府は民間の活力を沸き立たせることに力を注いでいる。企業に対し設備投資を活発にし、収益力の上がっている企業には賃金を上げるように要請している。
設備投資が今年の景気上昇のためだけではなく、将来の日本経済の発展のために重要であることは当然である。また賃上げが国民の所得の増加を通じて消費需要を活発にし、企業の売り上げ増大に結び付いて好循環をもたらすのは間違いない。
多くの企業では内部留保が厚くなっており、投資のための資金的な余裕は十分にあると考えられる。膨大な余剰資金を抱えている金融機関も融資に積極的である。
問題は将来性のある投資機会が見つからないことである。内外の現状と将来性を考慮すると、経営者としては投資に慎重にならざるを得ない。社員の賃上げをしても将来にわたり現在の収益が確保できる保証がない。それが企業の活発な行動を躊躇させる。
結果として大きな期待には沿えない年になりそうである。
--- TabisLand Hotビジネス情報への寄稿(2016.1.1)から---