名古屋大学  客員教授

                              経済学博士 

 世界経済は低迷を続ける

   ―――低迷する主要国の経済―――2015121

 世界経済は低迷から抜け出すことができそうもない。

 回復を続けるアメリカに期待したところであるが、少し調子が良くなると、中央銀行である連邦準備制度理事会が金利を上げるであろう。異常な低金利を是正する必要性を痛感しているからである。

 極端な資金余剰を放置できないのは各国とも共通である。長年にわたり中央銀行から大量の資金が供給され、金利水準が異常な低さとなっている。

 金融情勢を正常に近づけなければ、金融政策が機能しなくなっている。景気が回復すれば、金利を上げ、資金の供給量を抑えることになるであろう。それが景気の頭を抑えることになる。

 我が国をはじめ各国の財政悪化も極端になっており、多くの国で是正を迫られている。そのために必要な増税も財政支出の削減も共に景気を悪化させる。

 例外的に財政再建を達成し、好調であったドイツが自動車工業の不祥事から一転して国家経済を揺るがすほどの状況となってしまった。頼りとするドイツがこの情勢だけに、ヨーロッパ経済は復活が難しくなるであろう。

 世界経済を引っ張ってきた中国経済の成長率が落ちてきた。現実には経済問題よりも、むしろ社会問題が大きいように思われる。政治が安定しないと、大変動につながる恐れがある。長期的には少子高齢化が急速に進み、中国経済の成長抑制要因になるであろう。

 世界経済が急成長を続けた恩恵に浴していた資源国が逆風に苦しんでいる。資源に対する需要が急減したため、資源価格が下落し、ロシアをはじめ多くの資源国が苦境に喘いでいる。かつて貯め込んだ資産によって持ちこたえている国があるものの、いつまで続くか懸念がある。

 このように世界経済はまったく様相が変わってしまった。当分の間、力強い経済成長を世界各国に期待することは難しいであろう。したがって我が国の輸出環境に明るさを見込むことはできないと思われる。

--- TabisLand Hotビジネス情報への寄稿(2015.12.1)から---

 

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