名古屋大学  客員教授

                            経済学博士  

 2015.12.1

    低迷する主要国の経済

    ―――世界経済は低迷を続ける―――

 国内で売れなくても、海外へ輸出ができれば、その恩恵は多方面へ広がる。

 ところが世界各国の景気は下降を続けた後、横ばいの状況である。

回復してきたと見られるアメリカも力強さが見られない。少しでも明るい兆しが明瞭になれば、中央銀行が金利を引き上げようと待っている。これまでに異常なほど低い金利に下がっており、それをできるかぎり元の水準へ戻すべきだと考えられているためである。

それはアメリカだけではない。日本を含めて多くの国に共通する事情である。すなわち長年にわたり中央銀行による大量の資金供給と金利の引き下げが続いてきた。そのため異常なまでの資金過剰になっており、金融政策の効果が発揮できなくなっている。

景気が回復基調になれば、金融情勢を正常に戻さなければならない。それが景気の頭を抑えることになる。

さらに深刻なのは各国の赤字財政である。財政の正常化は景気を悪化させる。そのため簡単には財政再建を進めるわけにはいかない。それだけに、もし景気が良くなれば、財政問題を放置できない。その財政改革が各国の景気悪化要因となる。

財政面の優等生であったドイツが自動車メーカーの不祥事から国家経済を揺るがす事態に至る可能性が出てきた。その影響はヨーロッパ全体の経済にマイナス要因となろう。

世界中を引っ張り上げてきた中国の成長率が落ちてきた。それが一時的なものではなさそうである。中国社会の混乱が簡単に収まるとは思われない。長期的には急速に進む少子高齢化の大問題を中国は抱えている。

主要国の低迷が世界の資源に対する需要縮小に結びつき、資源価格が急落したままになっている。それが長年にわたり活況を呈していたロシアなどの資源国の経済に大打撃となっている。

この情勢は当分の間、続くと考えられる。したがって世界の経済が近い将来に低迷から脱することは難しいであろう。我が国の輸出環境が当分の間、好転するとは思われない。

---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2015.12.1)から---

 

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