名古屋大学 客員教授
経済学博士 水 谷 研 治
GDP 600兆円の可能性
―――経済は拡大できるか―――2015年11月1日
安倍総理は新しい3本の矢を発表した。高い目標を掲げて挑戦する姿には賛意を表するとともに、協力を惜しまないつもりである。ただし、その実現性については疑問と言わざるを得ない。
目先の景気が思わしくない。政府が想定していたような成長路線には乗らず、むしろ低下傾向が出てきている。世界的な経済の萎縮が続いており、その影響が我が国の経済にもマイナスの効果をもたらしている。
国内では人手不足のところが出ているものの、全体として給料は上がらない。消費もさえない事態になっている。売れ行きが芳しくないため企業も活発に行動するとは思われず、むしろ慎重な態度になってきている。
このような情勢は一時的なものとは考えられない。今後、長く続く可能性がある。
それを打破するためには政府による積極的な景気振興が必要である。ところがそれは極めて難しい。我が国の財政が破綻しているからである。
長年にわたり膨大な赤字財政を続けた結果として、莫大な国債残高になってしまった。世界各国の中でも飛び抜けた状況である。もはや放置できなくなっており、官民を挙げて財政改革に取り組まなければならいない事態である。
必要なことは財政支出の徹底した削減と大増税である。それが景気を大きく引き下げる。しかも、それを長期にわたり実行しなければ、財政が再建できない。
このことの意味は明確であり、深刻である。長期にわたり経済が縮小する。
今や我々はその覚悟を決め、それへの対応を急ぐ必要がある。国民の一人一人や各企業がそのような行動に出れば、全体の景気は大きく落ち込み、経済の縮小に弾みがついてしまう。
それだけに早目の対応が必要になる。GDP600兆円の夢に踊らされているわけにはいかない。
--- TabisLand Hotビジネス情報への寄稿(20151.11.1)から---