名古屋大学  客員教授

                            経済学博士  

    経済規模の拡大は期待薄

    ―――GDP600兆円は無理―――

新しく3本の矢が示されて話題になっている。

政治の目標は理想を掲げることでもある。放置していても自然に達成されるとすれば、わざわざ政治家が出る幕はない。困難な課題であるが、それに力を注ぐべきことを前面に押し出すことは、重要なことである。

ただし、その目標が達成できるか否かは、それを前提として将来計画を作ることができるか否かの分かれ目となる。

我が国の経済規模を示す国内総生産を600兆円にしようとする第一の矢については2020年頃を目標にして政府の施策を検討することになるようである。

細かい数字にこだわる必要はないと思われるが、大きな筋道として、ゆっくりとした速度であるが経済の拡大が見込まれている。

このような低い経済成長では不満という意見もあろう。しかし過去四半世紀にわたる日本経済の足取りを見ると、一高一低はあるものの、基本的には横這いである。

それが上昇路線へと変えられるであろうか。

 歴代の政府は景気を引き上げ、経済を成長させようと懸命の努力を重ねてきた。あらゆる施策を動員してきたと言ってもよかろう。それらの中で最も有効であったのが財政政策である。

 その中身は公共投資をはじめとする財政支出の増加と減税である。それによる需要の増加が効果を発揮することは、良く知られている。それだけに財政政策が長年にわたり利用されてきた。

 その結果、財政の赤字が増加することになり、毎年の赤字分だけ国債残高が上乗せになるため、今や国債残高は異常な金額となり、放置できなくなった。

 財政再建は緊急の課題となっている。結論として財政赤字の大幅な削減が必要である。それは経済水準を低下させる。その大きな力を撥ね退けるような上昇要因を探し出すことができるであろうか。

 結論として、きわめて困難と言わざるを得ない。そのことを前提として、今後の対応を考える必要がある。

---ISIDフェアネス-パーフェクトWebへの寄稿(2015.11.1)から---

 

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