目先の偏重   ―――将来性こそ重要―――  2015101

                 名古屋大学  客員教授      経済学博士 

 目先の問題は分かりやすい。稼ぐために、まず売る必要がある。そのためには人々の懐が豊かになることが望ましい。それには景気が良くなることが一番手っ取り早い。

 景気を良くするためには需要を伸ばすことが必要である。それが政府の政策に求められる。政府も国民の要望に沿って、需要の拡大に力を入れてきた。

 その結果について多くの人々は満足していない。目標とされてきた経済成長率に及ばないからである。さらに強力な需要振興策が求められることにつながる。

 このようなことを繰り返している間に、長期的な問題が出てきた。供給力の問題である。

 半世紀にわたり、我々は供給力の過剰に悩まされてきた。これがデフレ要因となっているのであり、デフレ克服のために需要の振興に努めてきた。そこには圧倒的に大きな供給力があり、それが将来も続くとの暗黙の前提があったはずである。

 実際には我が国の供給力が相対的に落ちてきている。かつては世界中を席巻した日本製品が外国製品に置き換わり、我々が各国へ輸出していた製品を海外から輸入する場合が増えてきた。一度手放した優位性を取り返すのは容易なことではない。

 優れたものを安くつくるためには、高い技術が必要である。その技術を絶えず高めていかなければ、世界の中で優位性を維持することは難しい。その素地が徐々に失われつつあるように思われる。

 必要なことは、長期にわたり地道な向上心を維持していくことである。その成果は簡単に出てこない。それだけに世知辛い世の中では、我慢がしきれない。効果が分からない投資は非効率だと考えられる場合が少なくないようにも思われる。

目先を重視し手っ取り早く成果に結び付く面が重視される気風が高まっている。それだけに長期的な観点で将来の発展を目指すことが極めて重要である。それは個人としても、企業としても、国家政策としても変わることはない。

--- 税務会計情報ねっ島TabisLand Hotビジネス情報への寄稿(2015.10.1)から---

 

inserted by FC2 system