名古屋大学  客員教授

                                                      経済学博士 

 人手不足で難しくなる教育

     ―――発展の阻害要因へ―――201571

 社会を背負っていくのは「人」である。人々が意欲的で向上心に溢れていれば、その社会は発展していくであろう。逆に人々が現状に甘んじていたり、退嬰的であれば、その社会も衰退すると考えられる。

 それは最小単位である家庭でも、最大の国家でも、企業でも同様である。それだからこそ人の質を高めることが重要である。それには教育が大きな役割を果たす。その結果として、その人を含めて社会が繁栄し発展していくと考えられるからである。

 ところが現実には、教育が難しくなってきている。自分の好きな仕事をやりたいと考え、いやな仕事をやり遂げる人が少なくなってきた。将来のためには、苦労して知恵を身に付けることが必要と力説されても、素直に応じてくれるとは限らない。

 そもそも先生や先輩を尊敬する気風が乏しくなってきた。これでは真剣に教育しようとしても、曲がって受け止められかねない。厳しい教育に対してはハラスメントの問題が出てくる。それを気にすれば教育する側も逡巡せざるを得ない。ご機嫌をとりながら行う教育には限界がある。

長年にわたり学校や職場で多くの先生や先輩が努力を続けてきた。ところが教育する側に余裕がなくなってきた。社会全体として、即効性が求められるようになってきたからである。

 少子高齢化が進み、人手不足が深刻になりつつあるところから、条件はますます悪くなってきた。豊かな社会で育った人々は現状に満足し、無理な発展を求めなくなる恐れがあるからである。

 その結果として目覚ましい飛躍を遂げる企業が少なくなり、経済社会全体の発展性が乏しくなっていく。それが現実の我が国経済の成長率の低迷に表れているように思われる。このままでは経済規模が縮小していく恐れがある。

 我が国の場合、経済の衰退は決定的な破綻に直結し、それが一人一人の生活水準の下落に繋がることを忘れてはならない。それを回避するためには、今一度、原点に立ち返り、個人も企業も教育の重要性に目覚める必要がある。

---セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLand への寄稿(2015.7.1)から---

 

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