国債の評価はA

                     名古屋大学  客員教授

    経済学博士  

格付けの評価

 Aと言えば最高と考えるのが普通である。日本の国債がAであるのは当然と思われるであろう。Aの上にAAがあり、その上にAAAがあって、上から6番目に位置するとAを正確に評価する人は少ないのではなかろうか。

現実にはAが格付け機関フィッチの日本の国債に対する見方である。

そもそも評価についてAAAまで作ることは格付けに対する自信の無さを表しているのであり、無視すれば良いとの意見も一理ある。

しかし一つの基準で世界各国の国債を比べた場合の結果については素直に見ておく必要がある。

ムーディーズとS&Pとフィッチの3大格付け機関による評価を総合すると、第1位にドイツなどの9か国が並んでいる。第3位にアメリカ、第6位にイギリス、第8位にフランスが居る。

我が日本は第14位という低位置にある。ちなみに韓国は第11位、中国は第12位である。

国の数で見ると日本の上に23か国がある。我が国は世界で24番目になる。

 日本の下には最低のアルゼンチン、一つ手前のギリシャなど25か国がある。したがって我々は世界の真ん中よりも一つ上であるなどと強がりを言っているわけにはいかない。

 日本経済に対する見方が厳しすぎるとの見解がある。ただし反対の意見もある。現実に日本経済は成長せず、円相場も大きく下がってきている。先行きの少子高齢化に歯止めがかからない。どのような言い訳を並べても大きく評価を変えることは無理である。

 膨大な国債の利払いが今後続けられるか疑問である。満期が来ても国債が償還できるとは思えない。国家財政は毎年膨大な赤字を続けており、赤字分だけ国債が増加していく。すでに過大になっている国債残高は急角度に増え続ける。

 建設国債と赤字国債800兆円に対して国の年収60兆円では対処の仕様がない。満期に国債の償還ができなくなるのは目に見えている。現在は異常に低い金利のために目立たないが、将来、正常な金利になれば、国債の金利支払いはできなくなる。

 

国債残高の削減が必要

 現状がどれほど厳しくても、それに対する認識があり、対応策が採られていれば、将来に希望を持つことができる。

ところが我が国の場合には、その片鱗も伺えない。まず危機意識がない。目先の景気に重点が置かれていて、将来の破綻には目を覆っている。将来の国民のことを真剣に考えているとは到底思えない。

必要なことは国債残高を大至急で削減することである。それ以外に国家財政の破綻を回避し、将来の国民を苦難から救う方法はない。

それをいつまでに実行するかが問題である。少子高齢化との競争である。後になるほど負担することができる国民の数が減り、一人当たりの負担が重くなるためである。

借金を減らすことは極めて難しい。収入を増やすことで切り抜けたいと誰もが考える。しかし現実を直視すると、経済成長率を高めることは至難である。税収を増やすためには増税が必至である。増税の結果、経済成長は低下するであろう。マイナス成長が続くことを覚悟しなければならない。

徹底した財政支出の削減と大増税が避けられない。その結果、大不況になり、それが何年も続くはずである。

深刻な事態になる。しかし、それは長年にわたり我々が問題を真摯に受け止めて対処することなく、すべてを先送りして目先の繁栄を追い求めてきた結果である。

従来と同様に、今の段階でも問題をさらに先送りができないことはない。供給余力があり、依然としてデフレの状態であることは、財政の赤字が景気の振興につながり、歓迎されることはあっても、問題を表面化させることにはならないからである。また過去に蓄積した膨大な対外純資産があり、それらを食い潰していけば、まだ何年も財政赤字を続けることができる。

しかし、その結果、国債残高はさらに巨額に膨らみ、ますます対処不能に陥ってしまう。冷静に事態を見つめ、どれほど大変でも、大借金を作ってしまった我々が、この借金を大至急で返済していく決心をし、実行していくべきである。      (みずたにけんじ)

---時局コメンタリー第1528号への寄稿(2015.6.23火)から---

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