名古屋大学 客員教授
経済学博士 水 谷 研 治
2015.5.1
格差是正の問題点
―――問題の解決は長期策として―――
格差の是正は必要である。より恵まれない人々には暖かい救済を考えなければならない。この点についての異論はないであろう。
ところが現実には問題がついて回る。
第一に上からの目線で下の人を救おうとする考え方が傲慢である。貰ってもらう姿勢が望まれる。受取る人が気軽に受け取っていただくことが必要である。そのように説得し、気持ちよく受け取って貰うようにしなければならない。
当初は遠慮していた人々も次第に考えが変わり、気楽に受け取るようになると、支援が順調に進むようになる。
支援を受けることが例外ではなくなると、より支援を受けたいと考える人が出てくる。
支援を受ける人が増えると問題が起きる。支援のための負担が増えるからである。より恵まれた人が負担するのが自然である。それが自由な意思で負担する限度を超えると社会全体として支援体制を作らなければならない。
最少単位は家であり家族である。最大は国家であり、企業は中間にある。
家や企業あるいは国が負担できる範囲を超えると、支援ができなくなる。力の弱いところは早目に限界が現れる。支援が好ましいことは分かっていても、続けられなければ、自立を促すことが必要になる。
一般に規模が大きくなると、その構成員が全体の将来の姿を描くことが難しい。個々の人々にとっては全体のことを心配するだけの余裕がない。将来よりも目先の利害が差し迫った問題である場合が多い。
その結果として、無理が積み重なり、再起不能の事態に至ることが考えられる。このことを承知の上で、長期的な観点で対策を練る必要がある。
それは企業を取り巻く多くの問題についても妥当する。企業としては最終的に社員に対し大乗的な見地で協力を求める以外にない。---ISIDフェアネス?・パーフェクトWebへの寄稿(2015.5.1)から---