名古屋大学 客員教授
経済学博士 水 谷 研 治
2015.4.1
新年度も経済拡大に頼らず
―――自己努力あるのみ―――
新しい年度には、より良い景気になって欲しいと願わない人はいない。全体の景気が良くなれば、それぞれ恩恵に浴することができるためである。
企業は売り上げが増える。それにつれて収益が大幅に増加するであろう。その結果として従業員のボーナスが増え、人々の懐が温かくなる。
景気の上昇が続けば、人手不足となり、賃金水準が上昇することが期待できる。
個人の所得が増加し、消費が増加する。それが一層、企業の売り上げを伸ばすことにつながる。
将来に対する見方が明るくなり、企業は売り上げの増加を願って投資を増やすであろう。原材料の増加に始まり、設備投資へと進む。そうなれば本格的な景気上昇に結び付く。
これが理想の姿であり、その実現のために政府は各種の施策を実施している。その成果は出ているものの、全体の経済は一進一退を繰り返し、力強い成長とは程遠い状況である。
基本的に経済の成長力が乏しくなっているためである。我が国だけではなく、世界全体が低迷気味に推移すると考えられる。
好調を伝えられるアメリカも世界全体を引き上げるだけの力はない。ヨーロッパは低迷を続けるであろう。世界的に資源に対する需要が減退しているため、資源国は苦境を続けると思われる。
我が国の政府はあらゆる手を尽くしているのであり、これ以上を期待しても無理である。
経済運営の主体は民間の企業と個人である。政府はお手伝いをするだけである。膨大な借金を抱えている我が国の政府には、もはや本格的に景気を押し上げる力は残っていない。
これまで景気を引き上げてきたのは、もっぱら企業を中心とした民間の努力の賜物である。新年度にあたり、政府の施策に期待するのではなく、あくまでも自分の力で道を切り開く覚悟を固める必要がある。
---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2015.4.1)から---