名古屋大学 客員教授
経済学博士 水 谷 研 治
期待される製造業の復活
―――物作りの復権―――2015年3月1日
円安のため日本製品の価格競争力が高まってきた。わざわざ海外で生産しなくても国内生産でやっていけそうだとする企業が出てきた。
従来は円高が進み、その傾向が進めば、どれほど国内で合理化を進めても、日本製品が割高となり海外へ売れなくなる。国内の消費者も国産品よりも安い輸入品を求めるようになるであろう。それに応じるためには海外へ生産拠点を移さざるを得ない。このような考え方から多くの企業が賃金の安い海外へと進出していった。
ところが状況が変わってきた。経済発展を続けた海外諸国の賃金が上昇してきたためである。進出先の賃金が上がってくれば、採算が合わなくなり、新しい国を探して移行しなければならない。
進出した外国で生産体制を軌道に乗せて採算が合うようにするためには大変な苦労がある。いったん軌道に乗った国でも安泰ではない。政治や社会の動きによっては激動に巻き込まれる恐れがある。
企業が活動するためには多くの条件が必要である。しかも状況が将来にわたって安定していなければならない。それを他国に求めることは極めて難しい。
世界の中で最も安全なのが我が国ではなかろうか。いろいろと文句を並べるものの、政治も社会体制も安定している。社会資本が整備され、正確に社会が運営されている点で世界でもまれな国である。
これらが経済活動にどれほど役立っているかに普段は気が付かない。しかし諸外国と比べると有利さは際立っている。勤勉で信頼ができる点で日本人が優秀であることも間違いない。
もちろん今のままで良いわけではない。長年にわたる経済の停滞が当然視され、活力がなくなったままであってはならない。政府依存ではなく、企業も個人も意欲的に新しいことに挑戦する必要がある。
長期的に考え、我が国の優れた点について見直せば、我が国への生産拠点の復帰は当然と考えられる。それは将来にわたる日本経済の拡大のためには極めて重要である。
---セイコーエプソンWeb
税務会計情報ネットTabisLand への寄稿(2015.3.1)から---