名古屋大学  客員教授

   経済学博士 

 経済成長なくても財政再建は必要

     ―――デフレ脱却による財政再建が理想―――201521

 景気が良くなることを皆が望んでいる。

企業は業績が上がり、個人は給料が上昇する。それらの結果として、法人税が増加し、所得税も増えるし、消費税も増えるはずである。おかげで国の税収が増加して、財政赤字が減少する。

しかし経済の実情は甘くない。世界の経済は低迷を続けるであろう。ヨーロッパがその代表である。中国の経済成長率が落ちてきた。アメリカは好調と言われるものの、かつてと異なり、世界経済を引き上げる力はない。世界経済の低迷が資源に対する需要に影響し、資源価格が下落してロシアをはじめ資源国を直撃しつつある。我が国の輸出環境は好ましくない。

政府の要請があり、企業は賃金を上げようとしているが、多くの中小企業にはその余裕がない。個人の懐が温かくなって多くを使うことになるとは限らない。先行きに自信がない企業は設備投資を増やすとは思われない。

需要を掻き立てようと日本銀行が資金を出しても、それらが使われることはないであろう。資金は異常なほど余っており、金余りに拍車がかかるだけである。

安倍政権は成長戦略に力を入れている。必要な施策であるが、それらは長期的な政策であり、短期的な効果を期待することはできない。

効果的な景気振興策としては財政政策がある。それは財政赤字を上乗せすることである。ところがこれほどまで大きくなった財政赤字をさらに増加させるとしても限界がある。むしろ財政赤字を縮小することが必要であり、財政支出を削減しなければならない。2015年度の予算もそのようになっている。

このように我が国の経済が拡大する要因がなくなっているのである。むしろ縮小することが避けられない。このことは国家の税収が将来にわたって減少することを意味している。それを前提にして財政再建を考えなければならない。

大増税と財政支出の大削減が必要である。その結果として経済規模は長期的に縮小する。

その中で我々は将来の計画を建てなければならない。もはや力のない政府に依存することは許されない。

---セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLand への寄稿(2015.2.1)から---

 

inserted by FC2 system