2015.2.1 名古屋大学 客員教授
経済学博士 水 谷 研 治
デフレ脱却による財政再建が理想
―――経済成長なくても財政再建は必要―――
安倍政権はデフレの脱却に懸命である。それには誰もが賛成である。景気が上昇すれば、企業の業績が上がり、個人の懐も豊かになる。その結果として税収が増えると政府の財政赤字が減少し、財政の再建ができる。良いことばかりである。
経済成長率の伸びよりも税収の伸びがより大きくなる。そのため高い成長率になれば、税収が大きく増加する。このようにして財政赤字が減ることが望ましい。
しかしデフレを克服して経済成長率を高めることは容易ではない。個人の消費が盛り上がる気配がない。企業も先行きに自信がなく、設備投資を増やすようには思われない。輸出も世界の経済を考えれば伸びそうもない。
中国の成長率が落ちてきている。ヨーロッパは低迷を続けるであろう。ロシアをはじめ資源国は世界的な需要減退で価格が下落する打撃が大きい。好調と言われるアメリカも世界経済を支える力はない。
安倍政権は成長戦略に力を入れている。ただし、それは長期的な政策であり、すぐに効果が出るものではない。金融政策はこれほど異常な金余りの中では効果を発揮することができない。
期待されるのは財政政策である。その内容は財政赤字を増大させることである。しかし、すでに巨大化している赤字をさらに積み上げるとしても限界がある。事実2015年度の予算では赤字を圧縮することになっている。
このことは財政面からは、むしろ景気を押し下げることを意味している。この傾向は今後も長く続くはずである。
このように見ていくと、右肩下がりの経済が避けられないと考えられる。デフレ脱却は極めて難しい。自然に財政赤字が減るような状況ではない。
経済成長に期待することなく、増税と財政支出の削減という王道によって財政再建を図る以外にない。その結果は企業にとっても個人にとっても大変厳しいものとなることを覚悟しなければならない。
---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2015.2.1)から---