名古屋大学  客員教授

                                                      経済学博士 

2015年日本経済の成長力

   ―――限界がある経済政策の力―――201511

 「アベノミックスは道半ば」と安倍総理大臣は言われる。現状は未だ満足な景気になっていないと認めたうえ、さらに景気を上昇させたいとの意欲が示されている。

 政府が景気振興に意欲的であることは、ありがたい。しかし、どのようにして実現するかを考えると、必ずしも楽観はできない。

 日銀が大量の資金を出し続けている。しかし現在は異常な金余りである。そこへどれほど資金を投入しても、金余りが酷くなるだけで、資金が使われるはずはない。投資意欲を掻き立てるとか、消費を増やすことにならない。

 極端に余った資金が株価を押し上げたり、円相場を引き下げる力にはなるとしても、それが全体の需要をさらに増やすことを期待するのは難しい。実態の経済が拡大しなければ、気分だけで景気をいつまでも押し上げ続けることはできない。

 景気を引き上げてきた大きな要因としては安倍政権が発足した当初の大量の補正予算が役立ったと考えられる。その効果が一巡すると、景気は頭打ちとなった。

今後も有力なのは財政政策である。ところが我が国の国家財政は大幅な赤字となっており、長年にわたり大赤字を続けた結果、国の借金は膨大な金額となってしまった。

 財政再建は必至である。したがって財政支出を増やすことはできず、むしろ圧縮せざるを得ない。それは景気を悪化させる。すなわち財政面から景気を刺激することは不可能になっている。

 より良い将来にしたいと誰もが考える。しかし現在の景気は異常に大きく押し上げられていることを忘れてはならない。膨大な国家財政の赤字によって、経済水準が大きく引き上げられてきたからである。しかも、それが40年以上も続いている。

国家財政の正常化を目指せば、財政赤字を早急に縮小しなければならない。それに応じて経済は本来あるべき水準へと下降する。すなわち日本経済は大きな下降要因を抱えているのである。

すでに膨大な借金を将来の国民に背負わせている我々が、さらに借金を大きく上乗せすることが許されるはずがない。景気を押し上げることは極めて難しい。

---セイコーエプソンTabisLand への寄稿(2014.1.1)から---

 

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