名古屋大学  客員教授

                            経済学博士  

 2015.1.1

    2015年の景気上昇力

     ―――経済政策の力には限界―――

 消費税の引上げを1年半先送りして景気の下落を防ぐことになった。ただし、その結果、日本経済が拡大するとは限らない。

 下押し要因がなくなれば上昇するというのは、基調として成長路線に乗っている場合である。残念ながら現在の日本経済はもはや成長期ではない。

少子高齢化は今後も続くであろう。全体の経済が拡大していないにもかかわらず、人手不足が起きている。これが傾向として進むのであるから、経済水準を維持することすら難しくなる。

円安になっても輸出が増加しない。世界経済が成長しなくなった影響が大きい。この状況が当分の間、続くと考えられる。それとともに我が国に輸出余力がなくなってきたことが心配である。

現在の日本経済は決して正常な状況ではない。国家の膨大な借金によって大きく押し上げられているからである。正常な経済の水準は現状よりもはるかに低いはずである。

多くの下押し要因を打ち消して景気を維持しようとすれば、大きな力が必要である。

金融政策には力はない。これほど極端な金余りの中では資金の値打ちがなくなっているためである。規制緩和などの長期的な政策は重要であるものの、短期的に効果を期待することはできない。むしろ場合によっては短期的にマイナスになることが少なくない。

結局、頼りになるのは財政政策である。財政赤字をさらに上乗せする分(の乗数倍だけ)需要を拡大することができるからである。

一方では財政改革が必要である。あまりにも膨大になった国の借金を減らさなければならない。赤字をなくして黒字にしなければ借金は減らない。

現在は危機的な財政状況である。それだけに、どの程度の財政赤字が上乗せできるであろうか。そのように考えれば、経済政策には大きな制約があることは明らかである。

政治家は国民に対して明るい将来を約束しようとする。しかし現実には約束を実現するため政府のできることには限界がある。

---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2015.1.1)から---

 

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