名古屋大学  客員教授

                                                      経済学博士 

 財政破綻への途

   ―――消費税引き上げの先送り―――2014121

 目先の痛みを先へ繰り延べることに賛否を問われれば、多くの国民は賛成するであろう。それでは将来がより大変になるため、今は辛くても我慢して課題を解消しなければならない。それを国民に説得し実行するのが政治家の役割ではなかろうか。

 残念ながら消費税の引上げは1年半先延ばしになるであろう。それまでの間に我が国の景気は良くなるとは限らない。我が国の経済を長期にわたり眺めてきた筆者はより悪くなると予想している。

 その段階で消費税を引き上げることが、どれほど大変なことかを考える必要がある。今よりもさらに景気が悪化している可能性が大きいからである。そして、その時に消費税が上げられなければ、もはや我が国の財政破綻は避けられない。

 破綻が表面化するまでには何年も後になると筆者は考えている。それだから困るのである。当分の間は問題にならないために先送りしてしまうのが人間である。その間に国の借金は鰻登りに増大する。そして手が付けられなくなる。対処の仕様がなくなる。

 金利の支払いのために借金を増やさなければならなくなり、それが金利の支払いをさらに増加する借金地獄へと転落するためである。今とは正反対のインフレ経済になるであろう。物価の上昇が続き、国民の生活水準は急落を続けると考えられる。

 その段階ではもはや打つ手はない。

 そのような事態を回避するためには前もって財政改革を断行し、国家債務を削減しておく必要がある。それを我々はこれまで怠り続けてきたのである。そして最後の機会を手放そうとしている。

 問題は極めて大きい。財政改革を本気で行えば、景気は急落するからである。景気の悪化を覚悟しなければ、改革を断行することはできない。しかも、景気の急降下が長年にわたって続くことを覚悟しなければならない。それ以外には、これほどまでに増大した国の借金を削減することは不可能であるためである。

 もはや国の施策に任せておくことはできない。将来を冷静に見つめて個々に対応を急ぐ必要がある。

---セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLandへの寄稿(2014.12.1)から--- 

 

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