名古屋大学  客員教授

                            経済学博士  

 2014.12.1

    消費税引上げの先送り

     ―――財政破綻への途―――

 増税には誰もが反対である。すべての国民にとって消費税は直接負担の増加になる。消費税の引上げを先送りにすることに、大多数の国民は賛同することになろう。

 1年半の後の経済情勢は分からない。それまでに今より経済水準が上向いている可能性があるとは限らない。

将来はより良くなると考えるのは経済が成長するという前提の場合である。これまで40年間以上にわたり日本経済をつぶさに眺めている筆者の見通しは逆である。結論から言えば、今後の経済水準はより低くなる可能性が大きい。

1年半後に消費税を引き上げることは、より打撃が大きくなることになろう。それにもかかわらず消費税の引上げを先送りするのである。

国民に判断を求めれば、目先の苦痛を避けたい国民としては増税の先送りを望むのは分かり切ったことである。問題の解決を先送りすれば、将来がより大変になることを国民へ説得するのが政治家の役割ではなかろうか。

正直に言えば、消費税を10パーセントへ引き上げただけでは問題は解決しない。それほど我が国の財政は危機的な状況なのである。さらなる大幅な引き上げと徹底した財政支出の削減が必要である。

それらを実行すれば、景気は大きく落ち込む。それが分かっていても、財政の改革を断行する必要がある。もしも財政の改革ができなければ、将来の財政破綻を避けることができないためである。

それは相当先の話である。したがって当分の間はまだまだ対応を先送りすることができる。しかし将来の国民のことを考えれば、そのような先送りが許されるはずがない。

財政破綻が表面化するのは国際収支で赤字が大きくなり対処ができなくなった後である。その時にはインフレが国民生活を破滅させると考えられる。

しかし消費税引き上げの先送りが事実上決まった今となっては、我々は将来の破綻に備えて準備に入る以外にない。

---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2014.12.1)から---

 

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