名古屋大学 客員教授
経済学博士 水 谷 研 治
無理な政策の限界
―――風向きの変化―――2014年11月1日
鳴り物入りで任命された5名の女性大臣の内2名が辞任に追い込まれた。これで一挙に空気が変わった。逆風が吹き始めたと言われる。しかし、それは正確ではない。勢いに乗った異常な風がなくなって正常化しただけである。
政治で重要なことは、勢いをつけて困難な問題を一挙に解決することである。自然に放置しておけば、いつまでも解決できないことに決着をつけることが必要である。
将来、少子化がさらに進み、労働力不足がより深刻になることが分かっているだけに女性の力を活用することの重要性について異論はない。そのために政策で強制することは重要である。ただし、そのために無理を重ねすぎたのではなかろうか。
功を焦ったのではないかと思われるのが北朝鮮との交渉である。
アベノミックスは3本の矢に代表されると言われる。その気魄で景気の勢いをつけたのは間違いない。しかし3本の矢が本当に効果を発揮するとは思われない。そのため勢いがいつまでも持続するわけではなく、失速するのはやむを得ないと考えられる。
短期的な無理であっても、勢いを付けるためには必要な場合がある。ただし、それにいつまでも依存しているわけにはいかない。本来やるべきことを地道に行う以外にない。それは長期的な対策である。
その効果は急に現れない。しかし、これこそ政策の基本である。多くの場合、長年の間に検討され計画されていて、真新しいものは少ない。しかも重要であっても実現が困難な課題が大部分である。
一般に長期的な重要課題を解決しようとすれば、短期的な犠牲を伴う。しかも重大なものには大きな犠牲が要求される。それだからこそ解決が難しく、長年にわたり先送りされる場合が多い。
その間に問題が肥大化して、ますます手がつかなくなるのが普通である。それに対処することが必要なのである。
それは政治の世界だけのことではない。一般の企業においても個人生活においても妥当することである。
---セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLand への寄稿(2014.11.1)から---