名古屋大学  客員教授

                            経済学博士  

 2014.10.1

    不景気でも人手不足

     ―――人手不足の大きな流れ―――

 4月に引き上げられた消費税により一時的に落ち込んだ売り上げの戻り方が議論されている。

大方の予想よりは戻り足が鈍い。そこには集中豪雨など異常な気候によるところもある。ただし、そのような一時的な要因がなくなっても、期待されていたほどの高い経済水準になるとは思われない。

経済が活況を呈するようになれば、働き手が引っ張りだこになり、人手不足になることが考えられる。しかし現状はそのような状況ではない。思わしくない経済状況にもかかわらず、人手不足が話題になってきた。

すなわち労働力に対する需要が増大したために人手が不足しているわけではない。もっぱら供給側の事情によるものと考えられる。若年層の縮小である。

長期にわたる景気低迷の中で、思わしい就職先が少ないこともあって、多くの若者が望まない部門へと進出した。それらの部門では豊富な人手を利用して、より高い水準のサービスを提供してきた。

その恩恵は社会全体へと行き渡っている。正確で迅速な物流制度はその一つであり、24時間営業の食堂にも多くの人々が助けられてきた。土木建設の現場が維持でき、介護サービスが提供されている。

それぞれの分野でより高い水準のサービスを目指してきたのであるから、人々は将来にわたってより良いサービスが安価で提供されるものと思っているかもしれない、

しかし長期的に見れば、それは無理である。少子高齢化がさらに進行するからである。若年労働力は長期にわたり減少することになろう。彼らが担ってきた分野は縮小を迫られる。

 従来、過剰な若手労働力によって支えられてきた部門の変革が必要になる。重要なサービス部門を縮小するか、あるいはサービス分門の料金の引き上げが避けられない。

それらに直接的あるいは間接的に依存していた社会は転換を迫られる。効率的な日本の経済社会の一角が崩れる。サービスを維持するためには高齢者などの活用をさらに促進することが必要である。

---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2014.10.1)から---

 

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