名古屋大学  客員教授

                            経済学博士  

2014.7.1

    アベノミックスへの過度の期待

   ―――70点では不満?―――

 アベノミックスへの評価が下がっているようである。景気の上昇が思ったほどでないためであろう。

 多くの人々は景気を株価によって判断している。株価が上昇すれば、やがて景気が良くなることが知られているからである。今後も株価が上昇を続ければ、先行きが明るくなり、状況が変わる可能性がある。

 株価を引き上げるために、いろいろな施策が打ち出されている。個人に株を購入させるだけでなく、大きな資金を運用している年金運用機関が株式投資を増やすように誘導するほか、外国から株式市場への資金の導入を促進しようと図られている。

 しかし株価が長期にわたり本格的に上昇するためには景気が良くならなければならない。ところがそれが難しい。

ヨーロッパの経済は底を打ったと言っても這い上がる勢いが弱い。アメリカの回復力にも大きくは期待できない。中国は大きな問題を抱えており、経済の成長率はなかなか上がらない。多くの新興国はひところの勢いを失っている。このような世界の経済情勢では我が国からの輸出も勢いがつかない。

国内の需要は消費税の引き上げに伴う上下を経て、今後はゆっくりと回復していくであろう。ただし基本的に膨大な供給余力が景気の頭を押さえていくことは変わらない。

これらの状況は以前から分かっていたことであり、それだけに政府による政策の効果には限界がある。その中で現政権は良くやっていると思われる。

採点すれば70点と言うところか。合格点と見ても良いのでなかろうか。ところが90点から100点を目指す向きからは、不満の声が上がる。

しかし、もともとこれ以上を目指しても無理なのであり、その意味では過大な期待を抱いていた向きには期待外れとなるのは仕方がないことである。無理な要求は将来に大きな歪みを招くことを忘れてはならない。

⁻⁻⁻ISIDフェアネスパーフェクトWebへの寄稿(2014.7.1)から⁻⁻⁻

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