名古屋大学  客員教授

                                経済学博士  

  2014.6.1

    消費の拡大策は目先だけの景気対策

   ―――好循環につながらない需要の拡大―――

 ものが余っていて、景気がパッとしない。ものが売れなければ困る。最終的には消費されるために、ものが作られているのであるから、消費を増やすことが必要である。そのために各種の施策が試みられている。

 国民に対して資金を貯め込むのではなく、できる限り消費するように勧めるのはその代表である。消費が増えて余っているものがなくなれば、新たに作らなければならない。そうなれば、生産活動が活発になり、景気が上昇していくはずである。

 ただし、それらの消費が一時的なものであってはならない。景気が一時上昇しても、長続きしないで、再び下降することになるからである。

 消費の決め手は収入である。賃金の引き上げを政府が企業に働きかけている。企業の収益力が回復している企業は久し振りに賃金の引き上げに動いた。ただし、その幅は大きなものにならない。

 国内の賃金水準は海外と比べて依然として高く、生産拠点を国内へ取り戻すことは考えられない。これでは賃金の上昇も限界があり、そこから生じる消費の増大もそれほど大きなものとはならない。

 消費が景気を大きく引き上げるためには、ものが不足するようになり、生産水準を引き上げるために投資を誘発することが望ましい。そうなれば景気に弾みがつき、長く大きく景気が上昇を続けることになる。

 ところが現在の我が国では、もの余りが依然として大きく、多くの分野で膨大な生産余力がある。そこで企業としては生産能力を高めるために、設備投資を本格的に増やそうとはしていない。海外での生産を進めてきた企業が、再び国内生産へと戻そうとする動きも少ない。

このような状況の中では、消費がよほど大きく増加しなければ、全体の景気を動かすことは難しい。

 消費だけで本格的に景気の好循環を作り出すことはできず、消費の拡大政策は目先の景気を少しだけ引き上げて終わる可能性があると考えられる。

---ISIDフェアネスパーフェクトWebへの寄稿(2014.6.1)から---

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