重要なのは目先ではなく長期的な対策

                     中京大学  名誉教授

    経済学博士  

予定通りの落ち込みと回復

3月末にかけ駆け込み需要がかなり多かったように思われる。各種の情報機関が4月からの消費税の引き上げについて大宣伝を繰り広げた効果が存分に発揮されたとみてもよいであろう。

大幅な反落は予想通りである。それだけに、その対応もまた予定通りに実施されるであろう。

今年度予算は本格的に前倒しで執行されることになっている。もしも、その結果として資金が不足するような事態になれば、早い段階で大幅な補正予算が組まれることになると考えられる

景気が落ち込んだままでは、政府として困るからである。来年の秋、再び消費税を上げるためには、今年の年末にかけて景気を引き上げておかなくてはならないと安倍政権は考えていると思われる。

もちろん対処しなければならない内外の課題は多い。たとえばウクライナの問題はその一つである。地理的な問題に民族問題がからまるだけに、利害関係が複雑である。

そこへ隣国や大国の利害が衝突するのであるから、簡単に解決できそうもない。その影響が我が国へ直接間接に及んでくる。

隣国との関係はより深刻である。これらの関係では、長年にわたり先送りしてきた結果が問われるものもあり、その場しのぎで対応すれば済むものではなくなっている。

長期的な戦略の下で根本から検討し、対応を図らなければならない大問題が目白押しである。

そのためにも当面の景気を維持するだけではなく、よりよくしたいと誰もが考える。その方法がないわけではない。強力な経済政策を実行すれば,少なくとも一時的に景気を盛り上げることができる。

ところが、そのためには何かを犠牲にしなければならない。力の弱いところに犠牲を払わせても長続きしない。強大な国家を犠牲にすれば、景気を長く下支えし、大きく押し上げることができる。

それを世界中の各国とも共通し大規模に実行してきた。その結果、多くの国で体質が徹底的に悪化してしまった。

 

目先の課題に重点を置くより将来の転落阻止を

その最先端を行くのが我が国である。体力の弱いところと異なり、我が国の場合は経済力が旺盛であり問題が表面化しない。その意味では、まだまだ問題を先送りすることができる。

そのために、ここで大きく判断が問われる。従来と同様に、相変わらず、目先の景気に重点を置いていくことができないことではない。ただし、そのためには必要となる莫大な資金不足を調達し続けなければならない。

すでに膨大となっている我が国の借金はさらに急激に増え続けるであろう。もはや借金地獄となって国家財政が破たんすることは避けられない。

将来の破綻を免れる方法は、膨大となった国の借金を大至急で削減する以外にない。

そのためのもっとも望ましい道は、景気が急激に上昇して、税収が急増することである。しかし、それを望んでも、かつての高度経済成長が再来すると考えることは難しい。

体質を徹底して改革するためには、目先の不都合に対して覚悟を決め、将来に目標を定めて、大転換を図る以外にない。

 具体的には徹底した支出の削減と大増税が必要である。その結果として、景気は急落する。しかもそれが何年も長く続くことになる。それを多くの国民に納得させなければ、このような大改革を長く実行し続けることができない。即ち成果に結び付けることは難しい。

 現在、我々が直面している大問題は、単に、目先の景気をいかに回復させるかといった小さなものではない。

 たとえ目先の景気が良くなっても、その結果として将来の大きな破綻が避けられなくなれば、その結果は将来の国民に重大な負担となってのしかかるであろう。頼りにする経済力が我々になくなっているとすれば、国際社会における我々の発言力も一挙に縮小していくであろう。

 破綻した我が国に対しては、どこの国も一顧だにしなくなり、国民は悲哀を感じることになろう。

 この問題に対処できるのは現在の我々以外にない。このことをわきまえたうえ、我々が考えるべきことを的確に摘出し、断固として大改革に乗り出す必要がある。          (みずたに けんじ)

---時局コメンタリー第146914.4.8 時局心話会大への寄稿から---

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