中京大学 名誉教授
経済学博士 水 谷 研 治
政府が支える2014年度の経済
―――来年秋の消費税再引き上げが重要―――2014年4月1日
消費税が8パーセントになり、その影響に焦点が当てられている。
予定されていただけに、だれもが対応したはずである。早目に買いだめが行われて需要が急増した反動で、今後は需要が急減するであろう。景気は大きく落ち込むはずである。
それが元へ戻るのに1四半期はかかると思われる。それも完全に元へ戻るのではなく、3パーセント近い分だけ低い水準への落ち着くことになるであろう。
ただし、それは国内情勢だけの要因に過ぎない。世界経済に暗雲が広がることが予想される。脆弱な5か国が容易ならざる事態に陥っている。
いずれの国も国際収支の経常収支が大きな赤字を続けている。その赤字を海外からの資金によって補填してきたため、長年にわたり、赤字問題が表面化しなかった。そこで大きな役割を果たしてきたのはアメリカをはじめとする先進国の膨大な資金余剰であった。
世界的な規模でかつて経験したことがないほどの大量の資金が供給されてきた。それが、より高い金利を求めて体質の悪いところを支えてきたと考えられる。恩恵に浴してきたのは当該国ばかりではない。そのおかげで世界全体が安泰に推移してきた。
それが限界にきており、再び元へ戻ることがない以上、世界の情勢は大きく転換していくと考えざるを得ない。それが我が国の景気にも悪い影響を及ぼす。
ところが今年度に関する限り、政府は景気の悪化をそのまま容認することができない。来年秋に予定されている消費税を10パーセントへ再び引き上げる決断を迫られているからである。そのためには景気を悪化させるわけにはいかない。
あらゆる犠牲を払っても景気振興策が採られるであろう。財政政策が利用されるはずである。それに対し通常なら財務省が反対する。ところが今年度に関しては、違うであろう。財務省自体が将来にわたる財源を確保するため、消費税の再引き上げに懸命になっており、一時的な財政支出を阻止しようとはしないと考えられるからである。
結果として、我が国の経済は政治主導で景気が維持されると思われる。ただし長期的には好ましいとは言えない。財政赤字が減らず、国の借金が急増を続けるため、子孫の負担がさらに嵩むためである。
---セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLand への寄稿(2014.4.1)から---