東京福祉大学 大学院教授

                                                      経済学博士 

困難な課題を抱える世界経済

     ―――難しい積極政策の収拾―――201431

 世界経済の回復力が弱い。

 アメリカの財政をめぐる政治的な駆け引きが続き、決着を先延ばしにしている。財政の赤字を認めないとすれば、現実に大変な問題になることは分かっている。しかし、それだからと言って、仕方がないと妥協していると、結果として体質の悪化は是正ができなくなるとの主張が繰り返されている。

 それを嘴の黄色い幼稚な原則論に過ぎないとの見方がある。その一方で今日の世界各国の抱えてしまった問題点を根本から洗い出して解決しなければ、いつまでも灰汁抜けできないのも間違いない。

 問題を作ってしまったのは長年にわたり目先中心の経済政策を続けてきた結果である。緊急事態を回避するために、中央銀行が大量の資金を出す事例が続いた。あるいは景気の落ち込みを和らげ、景気を上昇させるために、多くの国々が財政を犠牲にして赤字財政を続けてきた。

 それらの政策を元へ戻そうとすれば、経済状態も元へ戻る。すなわち景気が悪くなる。それが嫌なために赤字財政が是正されることなく続けられてきた。その結果、国家の体質が悪化して、放置できなくなっている。

 長年にわたる積極政策の結末をつけなければならない。将来を心配し、問題を正面から取り上げて根本から是正しようとすると、長期的には正しい方向ではあるが、短期的には大きく景気を落ち込ませることになる。その影響はすでに一部の発展途上国で影を落とし始めている。

 問題の大きさから考えれば、この程度の下押しで済むはずがない。問題が大きくなりすぎたために、根本から是正を図ることが難しくなってしまった。

そのために問題の解決が、さらに先送りされる可能性がある。幸か不幸か世界はそれだけの大改革を断行する覚悟ができていると思えないからである。

その場合には今後長い間、世界経済が低迷するであろう。暗雲がいつまでも残ることを考えておかなければならない。

---セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLandへの寄稿(2014.3.1)から--- 

 

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