東京福祉大学 大学院教授
経済学博士 水 谷 研 治
アメリカを救うかシェールガス
―――改善するアメリカの国際収支―――2014年2月1日
アメリカの経済にとって国際収支は深刻な問題である。大幅な赤字が続いているからである。赤字のために不足する資金を海外から借りて長年にわたり辻褄を合わせてきた。
そのようなことが何時までもできるはずがない。やがては借金で首が回らなくなり、致命的な事態に至るであろう。その影響は世界中の経済に深刻な影響を及ぼすはずである。
アメリカも懸命に対策を考えてきたはずである。しかし国際収支を是正することは難しい。それは国の生産力を上げて、海外へ輸出ができるものを作り出す必要があるからである。良いものを安く作ることができれば、それまで輸入していたものを輸入しなくても済むようになる。
ところがそのように生産力を上げることは簡単ではない。それだけにアメリカだけではなく世界中の各国が懸命に努力をしているものの、なかなか成果が上がらない。
今回のシェールガス革命は大きな成果を上げている。大量のガスがすでに生産され、アメリカの石油市場に影響を及ぼしている。
良いことばかりではない。シェールガスの採掘には大量の水が必要であり、公害問題がついて回る。そのために世界中で開発ができるとは限らない。ところが広大なアメリカ大陸であれば、その問題はなさそうである。
すでに世界の原油や天然ガスの需給に影響を及ぼしつつあり、我が国への影響も出てくるであろう。
かつて北海油田が開発され、それがイギリス経済を救った。それを上回る効果が期待される。アメリカの膨大な国際収支の赤字が現実に縮小しつある。この傾向で改善が続けば、事態は大きく変わっていく可能性がある。
アメリカのもっとも致命的と見られていた国際収支の赤字が解消するような事態になれば、世界の経済は一挙に変化する可能性が出てくる。
それは単に経済の問題にとどまることなく、世界の外交を根本から変える力になると考えられる。少なくとも、その方向に向かう大きな変化である。
始まったアメリカの貿易赤字の縮小がどの程度になるかを見ていく必要がある。
‐‐‐セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLandへの寄稿(2014.2.1)から‐‐‐