東京福祉大学 大学院教授

                                                      経済学博士 

 政策で下支えされる今年の景気

     ―――2014年の日本経済―――201411

  消費税が4月から引き上げられる。分かっているだけに3月末にかけて、駆け込み需要が盛り上がるはずである。景気は急上昇した後、4月には大きく反落するであろう。それが正常化するのは夏から秋になると思われる。

  新しい経済水準がどの程度になるかが問題である。放置しておくかぎり、増税分だけ元の水準よりは低くなるはずである。

  それでは政府として困るのである。2015年の秋から消費税をさらに10%へ引き上げようとすれば、今年の暮れに明るい景気にしておくことが必要と思われている。政府は法人税の引き下げなどによって懸命に景気振興策を積み重ねるであろう。

  安倍内閣の長期的な成長戦略に期待したいところである。しかし、その内容は長年にわたり語り尽くされていることが多い。経済を担っているのは民間の企業である。企業が活発に行動しなければ、本格的な経済成長にならない。しかし、そこへ誘導するだけの決め手に欠ける。

  政府が本格的に景気を上昇させようとすれば、財政政策を発動しなければならない。ところが国家財政が大幅な赤字であり、赤字を削減する必要があるため、財源がない。したがって景気振興策には限界がある。

  そのうえ世界の経済が成長しなくなっている。主要国が軒並み財政赤字に苦しんでおり、財政再建のために景気下押しの要因を抱えているためである。その影響から新興国をはじめ多くの国々の経済成長率が落ちてきている。それが簡単には上向かないであろう。

  世界経済が灰汁抜けするためには、多くの国で財政の建て直しが必要であり、それには長期にわたる財政体質の是正が不可欠である。その間、世界の経済は低成長が続くと考えざるを得ない。

  安倍政権がせっかく景気振興に懸命になっているのである。流れに沿って、景気を明るく見ることが必要である。しかし浮かれているわけには行かない。政府が懸命になるほど財政体質は悪化を続けることになる。それが将来の経済に反映されることを考え、対応を考えておくことが必要である。

---セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLandへの寄稿(2014.1.1)から---

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