東京福祉大学 大学院教授

                                                      経済学博士 

 金融による景気引き上げは無理

     ―――日本銀行は景気に対して無力―――201321

  参議院選挙が今後の政局の安定のために極めて重要である。絶対安定政権が確立されなければ、憲法改正など将来の我が国にとって必要な政策を実行できないからである。

そのためには参議院選挙の前に景気を良くしておかなければならない。政府は景気の引き上げに総力を挙げている。

大型の補正予算に次ぎ、新年度の予算の執行を思い切り前倒しにして弾みをつけることになろう。

問題は財源である。すでに膨大になっている財政赤字を上乗せするには限界があるからである。緊急事態であるから建設国債を増発することになるであろう。しかし、それにも制約がある。

総理大臣が金融面からの支援を願う気持ちは良く分かる。

相手は日本銀行である。日本銀行としては問題があるものの、政府の要請を受け容れないわけにはいかない。全面的に協力するであろう。

ところが、その結果として景気に対して金融政策が効果を発揮するとは思われない。

従来も日本銀行は政府の要望には十分に応じてきた。膨大な資金を供給し、金利を徹底的に引き下げてきた。

その結果として資金は極度に過剰になり、我が国の金利水準は極端に低くなっている。

  銀行は必死になって融資先を求めているものの、借り手を見つけることが難しい。余った資金の運用先がない。国債の購入しか方法は残されていない。

  このような状況の下で、さらに資金が大量に供給されても、その結果は明らかである。資金の過剰が上乗せになるだけである。それが新たな需要に結びつくはずがない。すなわち景気を良くする力にはならない。

  金融政策が有効になるためには条件がある。資金が全体として不足していることである。現状が全く逆の状況であることは明らかである。

すなわち今や我が国では金融の力はなくなっているのである。金融政策による景気の引き上げに期待することは無理である。

  政府や政策に依存することなく、本来あるべき道へ立ち返り、自分自身で事態に対応する必要がある。

---セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLandへの寄稿(2013.2.1)から---

 

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