2012.8.1
先人に託された夢
―――後世に残すべきもの―――
暑い夏が来た。問題は電力だけではない。閉塞感が強く、先が見えないと言われる。正確に言えば、未来に明るさが予想できないという意味である。
しかし、どれほど絶望的になったとしても、67年前の敗戦時に比べれば、たいした問題ではない。
多くの人々が戦陣に散り、戦火に倒れた。戦後も人々は内外で悲惨な死に方をした。残された国民も食べ物がなく、飢え死にしないのが不思議な毎日であった。
戦勝国の戦死者は英雄として祭られる。それに比べ、敗戦国の死者は残念ながら報いられることが少ない。これほど不幸な事はない。
無念の死を遂げた多くの人々は、おそらく祖国の繁栄を念じて逝ったと思われる。
しかし戦後の国土は文字通り荒廃していた。そのため我が国は永遠に立ち直れないと思われていた。
その日本経済が奇跡的な復興を遂げ、一人当たりの国内総生産で戦勝国アメリカをはるかに上回るところまで躍進した。
幸運にも世界情勢が我が国に有利に働いたことは大きかった。しかし国民の努力がなかったら、この奇跡は起きなかったであろう。我々は先人に託された夢を実現したのである。胸を張って誇ることができる。
ところが現状すべてを自慢できる状況ではない。長年にわたり国家財政を大幅な赤字にして、目先の景気を良くすることに専念してきたためである。
膨大な国の借金を後世に残すことになってしまった。我々が考えるべきことは、将来の国民がより幸福になることのはずである。そのためには我々が作った借金を我々がなくするのは当然のことである。
借金を返すためには生活水準を大きく落とすことは避けられない。
もちろん67年前にまで戻る必要はない。しかし、それくらいの覚悟がなくては、今日の危機を乗り切って、本格的な再興を願うことは不可能である。
決して甘く考えてはならない。しかし、我々が本気になれば将来は開けると確信できる。我々が実現してきたことだからである。
---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2012.8.1)から---