東京福祉大学  大学院教授

                                    経済学博士  

 2012.3.1

   金融による景気引き上げは無理

     ―――金余りを助長するだけ―――

  日本銀行はデフレを克服するために態度を決めて、大量に資金を提供するべきであるとの意見がある。物価の上昇率の目標を公表し、それが実現するまで大量の資金を投入せよと説く。

  経済情勢を大きく動かすためには財政政策と金融政策に寄らざるを得ない。

ところが財政政策は長年にわたり徹底して使い尽くしている。膨大な財政赤字をさらに上乗せしなければ景気を良くすることはできない。それはもはや現実的ではない。すなわち財政政策を頼りにすることができない。

残った政策として金融政策があると期待される面がある。

  ところが金融政策が効果を発揮するのは資金に力がある場合である。資金がないために経済活動ができない時には、資金を投入すれば、それを利用して経済を活性化させることができる。

  現実には我が国では資金が大量に余っている。ただし、どれほど資金が余っていても、一方では資金が不足して買いたいものが買えないで困っているところがある。それらの人々は資金が手に入れば、買うであろう。その結果、ものが売れ景気が良くなる。したがって資金の投入が効果的と思われるかもしれない。

  ところが、どれほど資金が余っても、資金が乏しいところへは資金が投入されることはない。原則として無償で資金を提供してくれるところはない。資金を運用するに当たっては安全性を重視するのが普通である。結果として、資金は不足するところへは向かわず、余っているところへ集まる。

  現在の我が国は極端な金余りになっている。原則として、行くべきところへは資金は回っているであろう。今後さらに資金が投入されても、現在でも資金が回っていないところへ資金が行き届くと考えることは難しい。

  日本銀行が投入する資金は金余りを促進するだけであり、実体経済を活性化することには役立たないと考えられる。

  極端な金余りはバブルにつながる。それが将来に大きな禍根を残すことを忘れてはならない。

---ISIDフェアネス・パーフェクトWebへの寄稿(2012.3.1)から---

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