消費税引き上げの目的は財政再建

                           東京福祉大学 大学院教授  

困難な増税  増税は嫌われる。できれば逃れたいと誰もが思っている。国民が嫌がる増税を主張することは難しい。増税を主張すれば選挙で負けると言われ続けている。あらゆる理屈を探し出して増税を先送りしてきた。そこで利用してきたのが国の借金である国債の発行である。毎年膨大な国債を発行して支出に当ててきた。それが難なくできるのが日本経済の特徴である。すなわち大デフレの下では国債の発行が容易であり、それによる赤字財政がデフレ対策として有用であった。すなわち目先的には国家が借金経営を続けることができるだけではなく、経済全体としても好ましいことであった。そのような状況に慣れてしまった今日、増税はますます難しくなる。それは民主主義の運命である。

 

目的化している消費税の引き上げ  極端な赤字財政が異常であることは誰もが知っている。大鉈を振るい、支出を徹底して削減しなければならない。それでも大増税が避けられない。税金を企業から取ろうとするものの、それは難しい。財政赤字を圧縮すると景気が急落するからである。どれほど法人税率を上げても、税収は上がらないであろう。個人が負担する以外にない。最も公平なのが一律税制である。結論として消費税の大幅な引き上げが必要である。ところが、それには山のような反対理由が並べられる。それを突破するために、すなわち消費税の引き上げを国民に納得してもらうために、増税分を将来にわたり増加が予想される社会保障費に当てることにしたのである。

 

すべては財政再建の後で  困難な消費税の引き上げを実現するためには手段を選ばず、手練手管を駆使しなければならないことは分かる。しかしそのような小手先の議論で対処できるような生易しい財政状況ではない。真正面から正々堂々と財政の再建を俎上に載せなければならない。我々には増税分を支出にも当てるような余裕はまったくない。大増税をしながら、一方では徹底した支出の削減が必要なのである。それらがすべて景気を急落させる。それは当然の帰結であり、もはや大不況を避けることはできない。それを受け容れず、対策を先送りしてきた結末が今日の惨憺たる財政実態なのである。財政が正常化するまでは、全国民が厳しい試練に耐える以外にない。                      (みずたに・けんじ)

---時局コメンタリー第1323号への寄稿(12.2.17金)から---

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