東京福祉大学 大学院教授

                                                      経済学博士 

 危機対策の基本は余力を持つこと

            ―――借金の削減を第一に―――201151

世界のどこかで絶えず大きな事件が起きている。しかし、自分の身近なところで起きず、平穏な年月が長く続くと、いつの間にか大きな危険が降りかかることを忘れてしまいがちになる。

  現実に危機が発生すると、やるべきことは明瞭である。全力で対処しなければならない。分かっていても、対応のために全精力を注ぎ込むことができるとはかぎらない。実際には、すべてを放置して事態に対応できるわけがない。やるべきことが山のようにあり、それらに配慮しながらになるのが普通である。

  危機はいつ起きるか分からない。天災、人災いろいろと考えられる。その時に対応するためには、日ごろから余裕を持っていなければならない。ところがそのような余裕がないのが普通である。

  余力は人であり、時間であり、資金である。もっとも重要な役割を果たすべき人に余裕があるかないかによって、帰趨は違ってくる。毎日ぎりぎりの綱渡りをしているのであり、特に有能な人にはそのような余裕はないと言われそうである。しかし、そのように有能な人を緊急時に思い切って働けるようにしておく必要がある。

  やるべきことが多いと、時間を割くわけにはいかない。やるべきことを少なくしておかなければならない。早めに処理しておくべきである。

資金の支払いが迫っていると、それに備えなければならず、余裕がなくなる。豊富な資金を持っていれば、その心配はない。その反対が借金である。苦境に陥っても、借金の返済は待ってくれない。

  災害の結果、資産がなくなっても、負債は残ってしまう。多額の借金を背負って生きていくことがどれほど過酷なことかは分かっているはずである。それは個人でも、企業でも、県市町村でも、国でも同じである。

  一度作った借金は大至急でなくしておかなければならない。それは決して容易ではない。借金を減らすためには黒字にしなければならないからである。しかし危機に対処するためには困難を覚悟のうえで借金の返済を最優先にする必要がある。

---セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabis Land への寄稿(2011.5.1)から---

 

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