東京福祉大学 大学院教授    経済学博士 

 財政改革の衝撃

      ―――待つも地獄、進むも地獄の日本経済―――201131

  財政赤字が極端に大きくなっている。年間に国が使うことのできる収入30兆円に対し、70兆円を支出して赤字が40兆円にもなっている。積年の赤字の累計である国の借金である国債残高が膨大な額になってしまった。637兆円と年収の20倍を超えてきた。

  現在は極端なデフレのために金利が異常に低くなっている。将来、普通の経済状態に近づくと金利は大幅に上昇する。すると金利の支払いが年収でできず、金利支払いのためにさらに借金することが必要になり、一挙に借金地獄へと転落する。

  それを避けるためには、大至急で国の借金を減らさなければならない。それには財政を大幅な赤字から大幅な黒字に転換する必要がある。黒字分だけしか借金を減らすことができないからである。

  財政支出を徹底的に削減すると同時に大増税が必要である。分かっていても我々はそれを実行してこなかった。それが景気を急落させるからである。現在でも不景気であると皆が考えている。この段階で景気を急落させるような財政改革を本格的に実行しようとしても賛同が得られない。

財政改革は景気が良くなってからにしたいと、長年にわたり先送りを続けてきた。

  待てば情勢が良くなるのが高度経済成長期である。ところが経済が低迷すると待っても事態は好転しない。衰退経済では環境が悪化する。それが見えてきた。もはや先送りをすることはできない。

  本来なら政治が主導して大改革を断行しなければならない。ところが政治情勢が混沌としていて、そのような強力な政策を打ち出すことができない。それは現在の我々には幸いである。しかし将来の国民にとっては悲劇である。我々の残した膨大な借金の金利を毎年大量に支払い続けなければならないからである。

  早急に財政改革に踏み切らなければならない。長年にわたり先送りをしてきた分を解消しようとするのであるから影響は甚大である。景気は長期にわたって急落を続ける。それは我々がかつて経験をしたことがない深刻な事態をもたらす。それだからこそ企業も個人も将来のための準備を急ぐ必要がある。

 

参考:「財政改革の衝撃―――待つも地獄、進むも地獄の日本経済」水谷研治著 東洋経済新報社 20112

---セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLand への寄稿(2011.3.1)から---

 

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