東京福祉大学 大学院教授

                                                      経済学博士 

  財政再建の目標は借金の削減

            ―――目標を低くすると誤解を招く―――2009111

  来年度の予算編成が難航している。

  選挙のために作られた公約を守ろうとすれば、財政支出は増大する。その資金を節約で賄うことは不可能である。無駄をどれほど節約しても、とうてい十分な金額にならないからである。

節約で資金をひねり出すためには摩擦が生じる。それが全国各地で物議をかもしている。たとえ反対があっても、政権党として主張を貫く必要がある場合もある。ところが余りにも不条理なものもある

しかも景気が急落し、税収は激減している。本格的な増税はやらないことにしているのであるから、当然に赤字は大きく増加する。それを仕方がないではすまされない。すでにこれまでも財政は莫大な赤字になっており、それがさらに上乗せになるからである。

  赤字分だけ国の借金は増加する。すでに過大になっている国の借金はさらに大きく増える。それを国民一人一人が将来にわたって負担しなければならない。

  破綻に瀕している国家財政を再建することの必要性を否定する人はいないであろう。ところがその中身としては実現可能なものでなければならないとの意見が通っている。

すなわち、できもしない目標を掲げても意味がないと言われる。これほどの不景気の中で本格的に財政を改革しようとすると、景気をさらに悪化させる。ほどほどにするべきであり、景気が良くなってから本格的に財政再建を実施するべきであるとの意見が一般的である。

  可能なのは財政赤字の増大を少なくするところまでであり、それを目指すのが現実的とみられている。しかし、そのようなことをいつまでも言っていられない。本来あるべき目標を明確に掲げなければならない。それは借金を削減することである。

  さもないと本来目指すべき目標を見失い、当面の低い目標さえ達成すれば良いと考え違いをする可能性がある。ところが、その結果として、毎年膨大な借金を積み上げることになり、将来の破綻から免れることができなくなる。

  少なくとも、それによって将来の我々がどれほど厳しい対応を迫られるかを考えなければならない。

―――セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLand への寄稿(2009.11.1)から―――

 

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