東京福祉大学 大学院教授         経済学博士 

  借金経済が破綻した後の悲劇

                    ―――極楽から地獄への転落―――200921

  借金すれば資金を手に入れることができる。それを使えばものを買うことができ、幸せを手にすることができる。本人だけではなく、ものを売った人も幸せになる。売って資金を得た人が、それを使えば、さらに多くの人々を喜ばせることができる。

  分かっていても個人では借金するにも限界がある。企業ならある程度はできる。国全体で行えば、大規模に行うことができる。その結果として全体の景気が良くなる。

  それを世界最大の経済大国アメリカが長年にわたって実行してきたのである。世界中が好景気を満喫していた。

  借金をして支払えば、受け取った国で資金が余る。それを運用しなければならないために、アメリカへ投資の形で還流していた。世界的に資金が旨く循環していて、アメリカの国民も世界中の国々も全て幸せであった。

  資金はアメリカの住宅融資として使われた。住宅産業がアメリカ経済を押し上げ、アメリカの膨大な輸入が世界経済を大きく引き上げていた。

  それが破綻をきたした。世界的に資金が流れなくなった。経済の循環も一挙に止まってしまった。それだけで従来の経済水準は大きく低下する。

それだけでなく、大きな借金の返済が必要になる。そうなれば、従来とは反対の動きが出てくる。経済の水準を大きく引き下げる。

その動きがまだ出ていない。しかし、いずれは現れると予想する必要がある。

ところがアメリカの借金は余りにも膨大で返済ができない。資金を貸した世界の人々はまともに返済してもらえるはずがない。資産の目減りは避けられない。覚悟を決めなければならない。

  アメリカの輸入が今以上に激減すると、世界の経済も大きく下押しするであろう。それが一時的なものではないことに注目する必要がある。

現在は当面の金融機関の救済に懸命の努力が続けられ、そこに焦点が当たっている。しかし怖ろしいのは、その後に控えている実体経済の水準低下である。決して甘く考えるわけにはいかない。

―――セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLand への寄稿(2009.2.1)から―――

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