東京福祉大学 大学院教授

                                                      経済学博士 

  経済成長はマイナスへ

                          ―――景気は本格的に下降へ―――2008101

  景気見通しが一斉に下方修正されている。

  中でも政府見通しの修正が注目される。政府の見通しは、単なる見通しではない。見通しに基づいて政策を計画し実施する結果としての見通しである。すなわち政府の計画を示しているのである。

それはまた国民に対する指標としての意味を持っている。個人や企業が行動するための目安として、将来の経済がどのようになるかを想定するための基準になると考えられるからである。そのために、政府は将来の見通しを余り悲観的にすることはできない。もしも、そのような見通しを公表すれば、それによって企業経営者はますます悲観的になり、経済を悪化させることになるからである。

そのような性格を持つにもかかわらず、政府見通しが下方へ修正されたことは、よほど現実が悪化していると見られる。

今回の景気は戦後最長の上昇を続けた後、昨年末から下がってきている。

景気を的確に反映すると考えられる名目経済成長率を見ると、今回は景気の上昇期でも1%程度の低いものであった。2007年度は0.6%過ぎない。前年同期比を4半期別に見ると、20081-3月期-0.3%4-6月期-0.6%とマイナスになってきた。

このような下降傾向は当分続くと考えられる。したがって2008年度はマイナス成長になることは避けられないであろう。

問題はその後である。来年度には回復するとの見方がある。その要因としてアメリカ経済の復活を前提にする人がいる。しかしアメリカの経済はそのような生易しいものではない。世界の経済は下降を続ける可能性が強い。その結果、我が国の輸出は先細りになると思われる。その影響から国内需要もさらに弱くならざるを得ない。

このような状況が予想されれば、政策による梃入れが必要である。分かっていても、それができない。財政赤字が大きすぎて効果的な財政政策を発動できないからである。政府は大々的に経済対策を打ち出すであろう。しかし、その効果は限られると思われる。

このような現実を直視すると、結論として経済成長率は当分マイナスが続くと考えざるを得ない。決して甘く考えるわけにはいかない。

―――セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLandへの寄稿(2008.10.1)から――― 

 

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