10年後の経済水準

                       ―――将来を視野に入れた計画を―――200831日---水谷研治

  年度末は新年度の計画を作成する時でもある。どのような背景を前提にするかによって施策は大きく違ってくる。世界の情勢から国内景気の動向、さらには業界の特殊性を織り込み、身の回りに配慮しながら計画を練るのが普通である。

  毎年このような繰り返しによって今日の我々がある。これからも同様なことが続くであろう。その結果として将来は今とほぼ同じになると多くの人々が考えている。

  その場合、将来の経済水準が今と同じと思っている人はいない。今と同じ伸びが続くと考えられているであろう。

戦後最長の景気上昇を続けたとはいっても日本経済の伸び率は年率で僅か1パーセントである。これが10年続いたとしても10パーセントすなわち1割の増加に過ぎない。

団塊の世代以前の人々にとっては異常な低さと考えられるはずである。かつての日本経済は高度成長を続けており、10年経てば水準が2倍になっていた。

ところが、すっかり様子が違ってきた。10年経ってみると、ちょうど以前の水準へ戻っただけである。現実には我が国の国内総生産はまったく増加していないのである。

これまでも我々は努力をしてきたはずである。同様の努力を続けても、10年後はまったく水準が上がらないと考えられる。

これまでの目標は、いかにして景気の落ち込みを食い止め、景気を引き上げるかに置かれてきた。その結果、是正するべき課題を先送りして、目先の景気に重点を置いて施策を実行してきた。それでも経済は10年間でまったく拡大していないのである。

しかも、その結果として残ったのが赤字体質と借金経営の国家財政である。それが今後、どれほどの災厄をもたらすかが段々と分かってきた。将来にわたり国民の税負担が急増することが明らかになり、それが国民の購買力を削減するため、全体として売上げの減少につながるからである。

我が国の経済水準は大きく下がっていくことが予想される。それが個々の企業にとっても個人の生活にも深刻な影響を及ぼすであろう。

幸いにも来年度については、そのような悲惨なことにはならないであろう。政治情勢がそのような思い切った増税を許さないからである。しかし、そのようなことがいつまでも続けられない。早晩、大幅な増税が避けられない。その時から日本経済の本格的な縮小が始まる。

したがって10年後には経済水準が低下していくことを考えておかなければならない。現在の情勢が続くと考えて将来計画を作るのは危険である。

―――セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLandへの寄稿(2008.3.1)から―――

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