モノ余りがモノ不足へ転換する時

――デフレは永遠ではない――2007.5.1

  長年にわたりデフレが続いているために、我々はデフレが永遠に続いていくように思いがちである。

確かに、これから何年もデフレが続くであろう。その間に大きな変化が起こり、その結果としてデフレがインフレへと転換すると考えられる。

  その原因は、厳しいデフレが続くために企業経営が成り立たないからである。その結果、物が作れなくなる。国内で物がなくなる可能性がある。

物がなければ海外から買ってくれば良いと考えられている。実際に多くの物が海外から輸入されている。輸入品が安いために、国内の企業はますます苦境に追い込まれていく。将来にわたって産業の空洞化が進むであろう。

  企業が生き残れなくなり、生産を止めると、生産に伴う技術がなくなってしまう。生産を続けることによって、微妙な技術が伝承されていくのである。生産技術がなくなると、もはや品質の良い物は作れなくなる。これが我々の先輩であるアメリカやイギリスの経験である。

  我々がこれまで長年にわたって貯め込んだ対外資産を使えば、何年もの間、必要な物を自由に買うことができる。そのために物は不足することなく、国民は豊かな生活を楽しむことができる。

  しかし、対外資産を使い果たした後は、一気に物不足になる。デフレ経済はインフレ経済へと転換する。

  物不足になれば、物を作ればよいと思われるかもしれない。ところが、その時には物作りの技術が残っていない。そのために物不足が続いて悪性インフレになっていく。

  我々は目先のデフレだけに眼を奪われているわけにはいかない。将来を考えると企業に生き延びさせなければならない。企業を大切にする必要がある。

 

参考 「日本経済  インフレの危機」水谷研治著  東洋経済新報社

 

―――ISIDフェアネスパーフェクトWebへの寄稿(2007.5.1)から―――

 

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