夕張市より、はるかに悪い国の財政

       ―――将来の国民の負担は甚大―――2006101日―――水

北海道の夕張市は財政が破綻し深刻な事態となっている。

  繁栄を極めた夕張炭鉱が姿を消して以来、火の消えたようになった地域経済を立て直すために、関係者はそれぞれに努力を続けたはずである。結果としては試みが成功せず、事業のために借りた資金が返せなくなり、借金が膨大になっている。

  地方債だけで147億円にのぼっている。その金利支払や償還をする元になる市の収入を見てみると、地方税はわずか10億円にすぎない。交付税46億円と補助金28億円を市の収入に含めても年間収入は83億円である。地方債の残高は年収の1.8倍という膨大な額であり、そのうえ市が負担しなければならない借金がある。それらの借金合計550億円は収入の7倍に近い。

  夕張市に近い危機的な財政状況にある市町が他にもある。早急に抜本的な手を打つべきであることは誰にも異論がないであろう。ところがこの夕張市よりも、はるかに悪いところがある。国家財政である。

  国の借金はいわゆる建設国債と赤字国債だけで527兆円になっている。その金利支払と償還のためには年間収入を当てる以外にない。2006年度の予算を見ると国の税収46兆円に税外収入4兆円を加えると50兆円となっている。ところがその内15兆円は地方へ交付税として配分しなければならない。したがって実際に国が使うことができる収入は年間35兆円に過ぎない。

  国債残高の年収に占める比率は実に15倍となっている。国は夕張市よりも、はるかに酷い事態となっているのである。この長期国債の金利支払だけで年収の四分の一を使わなければならない。金利はこれから上昇していくであろう。しかも国債は今後も毎年15兆円以上増加し続けると考えられる。その結果、金利を支払うために、さらに国債を発行しなければならず、その金利負担が嵩んでくるという借金地獄への道を歩むことになるであろう。

  このような事態となっているにもかかわらず、国の借金が真剣に国会で論議されているようには思われない。我々は借金を返済することを本気で考えなければならない。少子高齢化が進み借金を負担することのできる国民の数が減っていくからである。

将来、デフレが終わりインフレとなると金利が急速に上昇し、破綻が現実のものとなっていく。それまでの間に借金を返さなければならない。

  借金を返済するためには、支出を削減し、収入を大幅に増加させる以外に方法はない。それらが、いずれも景気を大きく引き下げる。このことが一人一人の国民生活に影響することはいうまでもない。そして同時に企業経営の環境を大きく悪化させることを考えておく必要がある。

―――セイコーエプソンWeb 税務会計情報ネットTabisLandへの寄稿(2006.10.1)から―――

inserted by FC2 system