NIKKEI 4946(よくよむ)第247 2005.3.1(Tue)

 私の「日経の読み方」1    水谷 研治(中京大学大学院教授) 


(1)仕事に役立つ情報と沈着な論調に好感

 父親が銀行員だったので我が家では日経を取っていました。子ど
ものころから紙面を目にしていたのですが、本気になって読み出し
たのは大学生になってからです。経済学部の学生だったので最新の
経済情勢を日経でチェックしました。

 大学を卒業して銀行に勤めました。お客様と話をしていると日経
の記事が話題に出てきます。ますます日経から目が離せなくなりま
した。以来、数十年にわたって読み続けています。

 日経というと経済ニュースが中心の新聞と思いがちですが、それ
以外のニュース、例えば文化関係も充実しています。経済に重心を
置いた一般の新聞といえましょう。

 紙面にバランスが取れているのも特徴です。記事が理性的、節度
があって落ち着いています。情に流されたような見出しもありませ
ん。

 世の中には新聞がいくつもあります。それぞれスタンスが違いま
す。何紙も取って読み比べるという人がいますが、時間もお金もか
かる話です。大多数の読者は1紙を購読するだけで手一杯でしょう。

 新聞の紙面はその新聞社の価値判断を反映しています。ですから
どの新聞を読むかは十分に考えねばなりません。社会人に不可欠の
ビジネス情報が豊富で、論調も中庸(ちゅうよう)。こうした点か
ら、読むなら日経だ、と私は周囲に一押ししています。(談)

 

      NIKKEI 4946(よくよむ)第247 2005.3.1(Tue)

 今月の担当は中京大学大学院教授の水谷研治さんです。近年、名古
屋圏の活況が注目を集めています。この地域の堅実な「ものづくり」
の伝統が今日の飛躍をもたらしたと説く水谷先生が、日経紙面を通
して産業活性化への視点を提示します。

 

 

 

NIKKEI 4946(よくよむ)第248 2005.3.8(Tue)

私の「日経の読み方」2

             水谷 研治(中京大学大学院教授)


(2)毎朝20分かけて記事を読む


 このメルマガ読者の皆さんは、日経の朝刊を読むのにどれくらい
の時間をかけていますか? 私はゼミの学生たちに、20分はかけ
なさいとアドバイスしています。
 実際に時間を計るとわかりますが、朝刊を20分も読むのは大変
です。日経ビギナーの読者なら数分間で読み終えてしまうでし
ょう。
 日経の情報量は膨大です。わずかな時間で読みきれるものではあ
りません。それをたかだか数分間で読み終えてしまうのは、内容が
十分につかめないまま、記事の字面を読み流しているからです。
 日経を読みこなすには経済や産業などの基礎知識が必要です。記
事はこうした点にも触れていますから、丹念に読んでいると自ずと
基礎知識が身について理解できる記事が増えていきます。
 日経にはニュースを解説する紙面もあります。朝刊3ページの総
合面がそれです。1面掲載の大ニュースの背景や経済・産業への影
響を詳細に掘り下げています。同じ総合面の「きょうのことば」で
は最新の経済用語がわかります。
 この20分読みを1、2カ月続けると、日経に目を通すのが面白
くなります。ニュースの奥行きはもちろん、今後の展開も見えてき
ます。皆さんもひとつ試してみませんか。(談)

                      毎週火曜日発行

 

 

 

NIKKEI 4946(よくよむ)第249 2005.3.15(Tue)

私の「日経の読み方」3     水谷 研治(中京大学大学院教授)

 
(3)経済の流れと変化を意識して

 この前の回で、日経を毎朝20分かけて読んでいると、1、2カ
月のうちに記事に目を通すのが面白くなると話しました。読み続け
ていると、経済がいまどんな方向へ動いているのか、そして最前線
ではどんな変化が起きているか等々が自ずとわかってくるからです。

 例えば改革や再編です。郵政事業や年金を巡る動き、金融や流通
の企業統合に関する記事が連日のように日経に載っています。最新
情勢はもちろん今後の展開にも触れていますから、紙面のウオッチ
は日々欠かせません。

 日経には大きなテーマだけでなく業界や個別企業のニュースも豊
富です。社会人ならこうした記事の価値は自明でしょう。取引先の
ニュースを知っていないと仕事になりません。人事情報を絶えずチ
ェックするのはビジネス常識ですね。

 ところで朝の通勤電車で日経を読んでいる人をしばしば見かけま
す。ラッシュの車内では満足に紙面を広げるわけにはいきません。
大事な情報を見落とさないために朝刊は自宅でじっくり目を通しま
しょう。

 読み終えた朝刊は自宅に残します。そして奥さんに読んでもらい
ましょう。はるか遠い海外の出来事が家計を直撃する時代です。家
庭の主婦にも経済知識が欠かせません。日経は経済ニュースだけで
なく文化面なども読みごたえ十分です。夫婦共通の話題作りのため
にも少し早起きして朝刊を広げましょう。(談)

 

 

 

NIKKEI 4946(よくよむ)第250 2005.3.22(Tue)

私の「日経の読み方」4
             水谷 研治(中京大学大学院教授)
(4)会社とは何か――いま一度考える好機

 日経を1、2か月読み続けると、ニュースの背景や展開が分かっ
て記事を読むのが面白くなる。この連載で何度もこんな話をしまし
た。その好例が最近の紙面にあります。ニッポン放送の経営権を巡
るライブドアとフジテレビ・ニッポン放送との争いです。

 2月にライブドアがニッポン放送の株式を大量取得して筆頭株主
になりました。以来、経営権確保のためにドラマ顔負けの対抗策を
双方が繰り出した経緯はご存じの通りです。

 著名企業同士の対決だけに各メディアとも連日のように取り上げ
ていますが、日経の情報量はやはり圧倒的です。事実経過はもちろ
ん今後の展開予測も詳細に出ているので参考になります。

 この争いが今後どういう形で決着するのかは分かりません。しか
し、どちらが「勝った」とか、あるいは「負けた」という視点で判
断を下すと物事の本質を見誤るように思います。

 会社と株主、会社と経営者……。日本の会社ではいままで相互の
位置づけがいまひとつ不明確でした。ニッポン放送の経営権を巡る
争いはこうした現状に見直しを迫っています。

 確かに焦点は会社と株主、会社と経営者といったニッポン放送の
経営権を巡る争いです。しかし、その場合でも「会社は社会に貢献
するためにある」という根本が忘れられてはなりません。

 昨今、株主の視点を会社経営により強く反映させるコーポレート
ガバナンス(企業統治)という考え方が注目されています。企業の
社会的責任(CSR)を重視する会社も増えています。もちろん日
経には関連記事も豊富です。こうした記事を手がかりに「会社とは
何か」を再考してみてはいかがでしょう。(談)

 

 

NIKKEI 4946(よくよむ)第251 2005.3.29(Tue)

:私の「日経の読み方」
             水谷 研治(中京大学大学院教授)
(5)名古屋躍進の秘訣を読み取る

 先週の25日に愛知万博(愛・地球博)が開幕しました。「自然
の叡智(えいち)」が万博のテーマで、日本を含む参加121カ国
が環境問題など地球規模の問題解決に向けて世界に「知恵」を発信
します。1970年の大阪万博以来35年ぶりの総合的な万博とあ
って、日経紙面は連日パビリオンの様子を詳細に報じています。

 こうした大きなイベントだけでなく名古屋関連のニュースが近年
日経に増えています。地元のファッションや人気の食べ物も登場し
ました。いまや「名古屋発」は流行の最先端です。

 名古屋を中心とした東海地域が元気なのはもちろん地元経済が活
況なためです。この地域は全国有数のモノづくりの拠点。自動車産
業や関連企業が集結しています。自動車産業は目下快調そのもの、
おひざ元に好景気の恩恵が及んでいます。

 モノづくりの拠点になったのは堅実な土地柄のためです。モノづ
くりには飛躍がありません。より良いものを求めて一歩一歩積み重
ねた結果が今日の繁栄をもたらしました。

 自助、自立の気風もあげられます。企業は政府の施策を当てにせ
ず、経営や技術開発を自力で行います。財務基盤が強く技術革新を
リードするのもこうした経営方針を貫いた賜物といえます。

 愛知万博に先駆けて中部国際空港が開港しました。道路網も拡充
が進んでいます。この地域はこれから一段と飛躍するでしょう。

 日経に名古屋発のニュースがさらに増えていくと思います。紙面
から名古屋躍進の秘訣を読み取り、社会や企業のあり方を考えるヒ
ントとして生かしましょう。(談)

 

 水谷先生の「私の日経の読み方」は今回で終わります。

 

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